誰しも訪れるキャリアの苦難、乗り切るためには?
髙嶋氏は事業貢献に大切だと思うことについて、Wedding Park DRESSのリデザインプロジェクトで行った3つのステップから学んだことを説明した。
まず最初のステップは「社会の声を聞く」。サイトに関連するドレスショップや衣装を探しているカップルに価値を感じてもらえるものは何かをゼロから考えるプロセスである。これまでの業務ではWedding Park DRESSのサイトの改善に焦点を当てていたが、このプロジェクトでは制約を一切なくし、社会が本当に求める価値について深く考えた。
そして、実際にクライアントとの対面での会話を通じて意見を聞いた。髙嶋氏自身が直接話をしたのは一部のドレスショップに限られるが、他のディレクターや営業メンバーも含め、担当が持ち回りでクライアントとの対話を行った。直接対面が難しいクライアントに対しては、オンラインツールを使用して会話をする者もいた。
こうして社会の声を聞いた髙嶋氏は、衣装の在庫管理機能や試着予約が完結できる機能など、いくつかの新しいアイデアを考案し、「Figma」などのツールを用いてこれらの仮説を具現化し、ドレスショップやカップルに提案した。しかし、これらの提案に対しては、既に似たようなツールが導入されているか、やりたいけれど実現に難しい事情があるという反応が返ってきた。
このプロセスを通じて、髙嶋氏は「ドレスショップの方に向き合ってみると、衣装の在庫や試着予約をどう管理しているか、基本的な業務について知らないことばっかりだったと反省しました。しかし、直接のヒアリングを通じて、ドレスショップやカップルが望む最高の一日を実現するための気持ちに共感し、また情熱を感じ、これまで以上に事業への熱が強くなったのを感じました」と話した。現在もエンジニアとしてパソコンに向かうばかりでなく、営業担当の顧客訪問に同行して改善要望を聞く活動をしているという。
次のステップは「自分たちの考え、想いを言語化する」というプロセス。ここでは、入手した社会の声を基に、ウエディングパークとして何をすべきかを検討し、想いを言語化する作業を行った。髙嶋氏とチームは会議室で集まり、聞き取った声や調査結果、自分たちの実体験をもとに議論を重ね、課題・戦略・戦術を言語化したシートにまとめた。具体的な議論内容としては、提起された課題が本当にその原因なのかを深掘りし、真の課題を見つけ出す作業、カップルにとって良いものがクライアントやウエディングパークにとっても意味があるかを考える作業、そして提案された戦術が、本当に使いたいものかを再考する作業などが含まれていた。
髙嶋氏はこれらの作業を通じてリデザインの方向性を明確にすることができたとし、「迷ったときに、シートを見返して議論ができるようになりました。また、自分自身が納得しした戦術だからこそ当事者意識も高まりました」と話した。
3つ目のステップは「技術をつかって実現する」だ。これまでに考えた構想を具体的な技術によって実現する。髙嶋氏は、その前のステップによって、事業全体に及ぼす影響も考慮できるようになり、以前よりも広い視野で、将来的な運用を考えて設計ができるようになったという。
「今までは実装のリスクや影響範囲の把握をしていました。そこにプラスをして、事業として何をしたらカップルやドレスショップさんに影響が出るかを考えられるようになっていました。この変化は、周りから言われて気づいたことです」(髙嶋氏)
単に何かを作ることではなく、事業をより良くすることを目指すようになり、UIの改善や技術負債の解消など、プラスアルファでの改善を提案できるようになった。また、事業の視点から必要な技術を提案することの重要性を理解し、それを自身の憧れのエンジニアが行っていたことに気づいた。
髙嶋氏は、技術が事業の目標を実現するための手段であり、より良い手段を選ぶことで事業の武器にすることができるという考えに至った。エンジニアとして自信を持てなくなっていた状態から、リデザインの取り組みを通じて前向きになることができたのだ。また髙嶋氏は、モチベーションの維持において「自分自身が納得しているかが重要」と述べた。誰しもキャリアにおいて困難な時期が訪れるが、そのような苦難の時を乗り切るためには、自分の仕事への納得感やモチベーションが大きく関わってくると、今回の体験から学んだという。
最後に髙嶋氏は最も伝えたいこととして、「エンジニアという職種に限らず、さまざまな行動を取ることで、考え方や働き方が変わるという経験を得ました。職種に囚われることなく行動することが重要で、私はそれをエンジニアリングに生かしていくことが大切だと考えています。これからもこのアプローチを続けて努力したいと思っています」とコメントした。