仕事のやり方が覆る! サーバレスアーキテクチャとの出会いを通した、スキルアップとは?
佐々木氏にとって最初のスキルアップ戦略は、現状のやり方を根本から覆すことだったという。オンプレミスサーバーにミドルウェアを入れ、監視やセキュリティ設定、さらにアプリケーションの開発まで行うとビジネスとして成り立たなくなる。加えてウォーターフォール型の開発では、漠然とした課題に取り組むDXには対応できない。そう感じた佐々木氏は、業務に関わらずスキルアップが必要と考え、本やインターネットなどで情報を検索し、考えても見なかった新しい世界に出会うことになる。
まず斎藤昌義氏著『システムインテグレーションの崩壊』(技術評論社)を読み、「就職するまでも就職してからも全然考えたことがなかった」というSIerビジネスの限界を知り、衝撃を受けた。さらに、倉貫義人氏著『納品をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)から、継続的にシステムをアップデートしていくことで、要件定義が決めきれない顧客でも互いにWin-Winでシステム開発やプロジェクト推進がかなうことを知った。佐々木氏は、「それまで一括請負しか契約したことがなかったため、要件定義で決められた通りにつくることが当然だった。プロジェクトが進むにつれ、『こうしたほうがいいのに』と後から思っても、契約上の問題もあって、一度決められたものの変更は許さない。ジレンマを感じていたが、それを解決する手段を見出したように感じた」と語る。
そんな時に出会ったのがAWSだ。佐々木氏がAWSを初めて触ったのは2013年の4月であり、当時は社内でサービスを知る人はわずかだったという。Web上の情報を探し試してみたところ、ものの数分でサーバーが立ち上がり、OSも整った状態でログインができた。「この感動は今でも覚えている」と佐々木氏は語る。作成に1カ月ほどかかっていたデータベースが20〜30分でできたこと、非機能要件などもすべて網羅されていること、あらゆることが衝撃だった。そこから興味を持ってAWSを触るようになり、その度に今までの考え方を覆され、無我夢中でさまざまなサービスを試すようになった。
また佐々木氏は、キャリアに最大の影響を与えたものとして「AWS Lambdaを中心としたサーバレスアーキテクチャ」を挙げた。2014年のAWS re:Inventで発表されたAWS Lambdaに出会い、「必要なのはプログラムだけ。動く時間だけ費用がかかる」という説明に、疑問と同時にワクワクとした気持ちを持ったという。それまで夢中だったEC2を忘れ、Lambdaでの開発を試すようになった。
その結果、たどり着いたのが「サーバレスアーキテクチャ」だ。佐々木氏は「インフラのコストが画期的に安く抑えられ、これを使えば、今まで難しかったお客様にもさまざまな可能性を提示できるとワクワクした」と語る。当時はまだ手探り状態で顧客の要望に応えるには苦労も多かったが、現在は、佐々木氏が手掛ける案件の殆どがサーバレスとなった。
佐々木氏は、「サーバレスアーキテクチャに出会えたことがエンジニアとしてのキャリアにおいて最大の岐路となった」と振り返り、「スキルアップは決して簡単なことではない。私も意気揚々と取り組んだが苦労も多かった。だからこそ印象に残っており、その経験が変化の時代にあっても学習を楽しみ、困難に立ち向かう原動力になるはず」と強調した。