アメリカで就労できるようになるための代表的な3ルート
日本のエンジニアがアメリカで働くには、英語力や技術力の壁を越えなければいけないが、最初の障壁は「就労ビザ」である。その取得方法について、花木氏は次のように説明した。
「アメリカの就労ビザ(H-1B)の取得は抽選制であり、2022年の当選率は30%未満と、採用する企業にとってはリスクとなるので、ビザを持っていない人は選考に進めません。卓越能力者のビザ(O-1)もありますが、これも非常に狭き門です」(花木氏)
さらに花木氏は、現実的な就労ビザ取得のルートとして、「アメリカ企業の日本支社で働いて、アメリカに転籍(L-1)」「アメリカの大学‧大学院を卒業しそのまま働く(F-1からH-1B)」「アメリカ人またはグリーンカードを取ろうとしている人と結婚する」の3つを説明した。
アメリカの企業の日本支社で働いた後に本国に転籍するL-1ビザの良い点は、配偶者も就労できることだ。面接が日本語の場合もあり、欠点としては転籍が可能な会社が少ないことだ。花木氏は「GoogleやAmazonは、わりと自由に転籍が可能なので、その辺に入ると良いと思います」とアドバイスした。
L-1ビザは会社にひもづいているので他の会社に移ることができない。そのため、転職するにはH-1Bやグリーンカードに切り替える必要があるが、日本人がシリコンバレーで働く方法としては一番メジャーな方法だという。
アメリカの大学‧大学院を卒業しそのまま働く方法は、F-1という学生ビザから、理系の大学大学院卒業後3年間働けるOPTを経てH-1Bに切り替えるルートだ。韓国人や中国人にとってはメジャーな方法だという。
この方法のメリットについて花木氏は、「英語やアメリカ文化にどっぷり浸れる点はいいと思います。テック企業のコネもつくれますし」と話した。欠点としては、大学院に合格するハードルが高いことであり、たいていの人は10校ほど受験するという。
3つ目のルートは、アメリカ人やグリーンカードを取ろうとしている人との結婚だ。相手さえいれば一番楽な方法だが、そのような相手が都合良く見つかるとは限らない。他にも投資ビザや、カナダ国籍を取得してアメリカで就労するという方法もあるそうだ。
日本のエンジニアは、アメリカでも十分戦える
花木氏は、日本のエンジニアはアメリカで十分に競争できると考えている。最上層の優秀なエンジニアばかりでなく、日本人の一般的なレベルでも対応可能だという。しかし、日本のエンジニアが直面する課題として、データ構造とアルゴリズムなどに代表されるコンピュータサイエンスに関する知識不足が挙げられる。なぜならアメリカでは、新卒エンジニアはコンピュータサイエンスの学位を持っていることが多いからだ。
採用試験では、主にデータ構造とアルゴリズムに関する知識が問われるため、これらの知識を取得した上で、コーディング面接準備のプラットフォームである「LeetCode」で問題を解くことが有効な対策となる。ここで難易度Medium以上を50〜400問くらい解くと合格ラインに到達しやすいそうだ。
最後に花木氏は、「英語力はジュニアレベルならドキュメントの読み書きができれば、さほど問題ではありません。シニアレベルでは各種調整ごとが求められるため、英語でのコミュニケーションスキルが必要となります。今からでもコツコツ英語を勉強しておくことが何よりも重要です」と全体に向けてアドバイスをし、セッションを締めた。