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PCとスパコンの無理矢理な比較

標準ベンチマークであるHPCCを用いてPCとスパコンを比較する


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結果

 筆者のCore2 6700、メモリ2GBのマシンと、TOP500の第1位BlueGene/Lを比べてみましょう(後述のパラメータ調整をした結果です)。見るべき部分は「hpccout.txt」の最後にまとまっています。

表1
  HPL_Tflops MPIRandomAccess_GUPs MPIFFT_Gflops StarSTREAM_Triad
BlueGene/L 259 35.5 2870 160
GCC+ATLAS 8.56E-3 2.69E-3 6.56E-1 2.08081
GCC+GotoBLAS 9.09E-3 2.69E-3 6.56E-1 2.17258
ICC+MKL 1.24E-2 2.72E-3 6.63E-1 2.1144

 さすが世界最速のスパコンだけあります。実に爽快な負けっぷりです(Core2はチューニングによって、もう少し性能が出るはずですが、ここでは追求しません)。

パフォーマンス・チューニング

 ベンチマークでよい性能を発揮するためには、「hpccinf.txt」で与えるパラメータをチューニングしなければなりません。パフォーマンス・チューニングについてここで詳しく述べることはできないので、HPCCのベンチマークの一つ、HPLの最も重要なパラメータであるN(行列サイズ)とNB(ブロックサイズ)だけを調整してみます。

 基本的にはNが大きければ性能が上がります。しかし、主記憶に行列が入り切らなくなってはいけません。Nをどの程度まで大きくできるかは、「hpccinf.txt」に次のように記述することで調べられます。

4                     # of problems sizes (N)
1000 3000 6000 10000  Ns

 ます調べたい値の数を書き、具体的な値を次の行に列挙します。ここではN=1000,3000,6000,10000の4つの場合について調べたいので、1行目には4と書かれています。これが「hpccinf.txt」の書き方の基本です。

 NBを適当に決めてNを動かした結果を図1に示します。Nが大きくなると性能が上がり、主記憶がいっぱいになるところでがた落ちします。

図1 Nを変化させた結果
図1 Nを変化させた結果

 NBの値によっても性能が変わります。ATLASの場合は特に大きく変化するので、よく調べなければなりません。Nを筆者のマシンで性能が最大に近づく10000に固定し、NBを動かした結果を図2に示します。

図2 Nを変化させた結果
図2 Nを変化させた結果

おわりに

 スパコンの標準的なベンチマークであるHPCCをPC上で実行する方法と、実際に動作させた結果を紹介しました。はじめに述べたように、ベンチマークは実行したいタスクに似たもので行わなければ意味がないため、この結果でPC同士を比較することには、あまり意味がありません。

 意味がないとは言っても、高価なスパコンと一般のPCを同じ土俵で比較するのは、知的に面白いものです。行列などの専用ライブラリの導入方法が分かるという付加的な意義もあります。必要なライブラリの大部分はバイナリで配布されており、パッケージ管理ソフトウェアなどを使って容易に導入できるので、気軽に試してもらいたいと思います。

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 矢吹 太朗(ヤブキ タロウ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/1910 2008/10/01 14:05

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