生え抜きの推進担当者が語る、製造業をベースとしたDXとは
──岩﨑さんの現在の仕事内容と、簡単なプロフィールを教えてください。
私が所属する部署は社内におけるDX推進を担当していて、その中のデジタルAI・IoT企画課の役割は大きく2つ。一つは社内におけるDXのコンサルタントを担うこと。社内のいろいろな部署の困りごとや課題の相談を受け入れ、デジタル技術で解決するための具体的な方向性を示します。もう一つの役割は社内のデジタル人財育成・企画です。
とはいえ、私自身は元々、新工場の企画や設計などを担当していました。小さな頃から車が好きで、大学時代の専門は機械工学。モノづくりをしたいという思いから2010年にブリヂストンに入社しましたが、データサイエンスやデジタル技術に本格的に触れたのは、2017年に現在の部署の前身であるデジタルソリューションセンターに異動してからです。
──タイヤ市場では国内ナンバー1、世界でもナンバー2のシェアを獲得しているブリヂストンですが、DXにどのように取り組んでいるのでしょうか。
DXは、当社が掲げているビジョン「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を具現化するために欠かせない一つのアプローチです。コア事業であるタイヤ事業の強みを生かし、ソリューション事業へ進化させるためのビジネスモデルを構築、推進しています。
その一つがデータを活用し、お客さまに高付加価値を提供する「タイヤセントリックソリューション事業」です。さらには車両データや車両運行データなどを活用したモビリティソリューション事業の開発も進めています。これらを通して、「お客さまはどんなタイヤをどのように使っているのか」といったデータを集め、お客さまのニーズに合わせたモノづくりを行うことで、より良い商品、『断トツ』な商品を創っていける。それが当社の成長につながると考えています。
航空機のタイヤ摩耗を予測するAIモデルを構築
──タイヤから得られたデータを生かしてビジネスを創造した具体的な事例があれば教えてください。
日本航空(以下、JAL)と取り組んでいる航空機タイヤの摩耗を予測するソリューションはその一例です。JALが持つ航空機のフライトデータと私たちが持つタイヤの知見を組み合わせて、タイヤの摩耗を予測するAIモデルを構築しました。
一般的に航空機の部品は飛行時間や飛行距離で計画的に交換するオペレーションになっているそうです。ですが、タイヤは航空機や空港などそれぞれの使用環境によってタイヤの摩耗進展速度が異なります。そのため計画的に交換時期が予測しにくく、目視で確認して交換するというオペレーション。つまりタイヤ交換は非計画な業務となっており、突発的な交換や交換時期が集中すると残業が増えるなどの課題があったのです。それを解決するために開発したのが、摩耗を予測するソリューションです。
このソリューションを導入したことで、JALでは計画的にタイヤを交換できるようになりました。タイヤ管理工数や在庫の適正化ができるなど、安全性はもちろん、経済性や生産性、環境性にも優れた新たな価値が共創できました。