Pythonや機械学習まで! 部門長も受けたデータサイエンス研修とは
──ソリューション事業を展開するためには、タイヤ製造だけではなくデジタルがわかる人財育成が欠かせませんね。
そうなんです。ブリヂストンのビジネスは最上流のゴム農園から、製造、物流網、販売チャネルも自社で持ち、さらには1次寿命が終了したタイヤを再利用するリトレッド事業を展開するなど、長大なバリューチェーンで成り立っています。バリューチェーンを構成する各所では日々、データが生まれ、蓄積されている。それらのデータは長大なバリューチェーンを持つ当社だから得られるもの。このデータをうまく活用するためには、デジタルに強い人財が必要になる。だからデータサイエンティストの育成に力を入れているのです。
とはいえ、データサイエンスの知識や技術だけでは、お客さまの課題解決をするのは難しい。つまり課題をしっかり理解して、データサイエンスやデータで解ける問題に翻訳するということが必要です。そこで欠かせないのがドメイン知識、つまり現場で出てきた知見です。
現場で実際に物に触れてリアルを知っている人たちにデータサイエンスの技術を身につけてもらうことで、私たちにしかできない独自のアプローチで課題解決や価値の創造ができると考えています。ドメイン知識とデジタルの技術を組み合わせる、まさに「リアル×デジタル」によってDXを実現するため、外部に分析を任せるのでは無く、内部で人財育成することに注力しているのです。
──実際にどのような研修を行っているのでしょうか。
「リアル×デジタル」の融合による社会価値・顧客価値を創造するため、デジタル人財・データサイエンス研修を初級・中級、上級の3段階に分けて実施しています。
初級編については、2023年4月から「デジタル100日研修」という新たな研修をスタートさせました。これはデジタルリテラシー協議会の言う「Di-Lite(デジタルを使う人材であるために、ビジネスパーソンが共通して身につけるべきデジタルリテラシー範囲)」で学ぶべき領域として推奨されている3つの資格(ITパスポート試験、データサイエンティスト検定、G検定)の内容を網羅的に取り入れた研修となっています。デジタルリテラシーはもはや現代の読み書きソロバン。デジタル100日研修は全ての社員に受けてもらいたいと思っています。
ですが研修だけだとなかなか実践には繋がっていきません。そこでこの講座を受けた後、Pythonのプログラミング講座を用意。データ分析を行ったり、簡単なAIモデルや機械学習モデルを作ってもらったりという実践的な研修もセットで提供します。
まずはデジタルを知ってもらう。そのうえでデジタルを使えるようになってもらう。2段階の初級研修を提供しています。
──初級でPythonや機械学習にも触れるんですね。
AIを使えば何でもできるという魔法の道具と思っているような過度な期待をする人もいますし、一方でAIなんてまだ使えないでしょ、という思いを持っている人もいます。私たちはAIに対して適切な期待値を持ってもらいたいと思い、このような研修を用意しました。
もちろん、全員がゴリゴリと機械学習モデルをつくれるようになる必要はありません。AIとはこんなものだ、こういうデータを集めるとこんな出力をしてくれるんだ、活用にはこんなポイントがあるんだということを実践的に学んでもらうことが狙いです。
DXを推進している私たちの部署だけでは無く、すべてのブリヂストン社員がデジタル活用を自分事として捉えてもらわなければいけないと思っています。
研修は基本的に希望制ですが、初回のデジタル100日研修は想定の2倍以上の社員が申し込んでくれたため、急遽、定員を拡大しました。受講者の属性は多種多様。工場で働いている従業員もいれば本社や技術センターで働いている従業員もいる。総合職もいれば一般事務職、さらには部門長などの管理職の方もいます。
ちなみに中級は1人で課題設定から、データを活用し、その結果を業務に実装して業務の課題解決に結び付けることができるようなレベル、上級ではアカデミアを含めて、学術界の動向を取り入れながら、最新の技術を実装できるレベルを求めています。