急増するAPI利用、いま注目のAPIファースト戦略とは
アプリケーション開発において、APIの重要性はますます高まっている。なぜ、API利用が急増しているのか。「その要因は3つ考えられる」と草薙氏。第1にユーザーのアプリケーションの利用がデスクトップからモバイルへと変わったこと。第2にアーキテクチャがモノリスから複数のモジュールが相互に通信するマイクロサービスへと変わったこと。第3にインフラがオンプレミスからクラウドに移行したことが挙げられる。
APIを取り巻く変化はこれだけではない。「APIの新しい使い手が増えてきたことも大きな変化」と草薙氏は言う。APIの利用が始まった当初の主な利用者はeコマース事業者だった。しかしソーシャルネットワークが登場し、クラウドが主流になり、さらにモバイル、IoTが登場すると、使い手の中心は人が書いたプログラムとなった。さらに「今やAIが能動的に、どんな機能のAPIがあるのかを理解し、AI自身が呼び出して使うという時代になっています」と草薙氏は言う。つまりサービス提供者は、APIを正しく作らないと、AIとの連携が難しくなる。「このようにAPIに対する考え方が変わってきているのです」(草薙氏)
そういった状況のなか、PostmanではAPIファースト戦略を提唱している。どのようなものか。「APIはインタフェースだが、それ自体がプロダクトという位置づけであり、APIを中心に自分たちのビジネスやサービスを考えていくこと。つまりAPIファーストは技術よりもビジネスや会社の戦略を取り込みながらAPIを考えるアプローチです」と草薙氏は説明する。
そしてAPIファースト戦略は、APIファースト開発モデルというAPIを主軸に開発の中で取り扱っていくという技術的な要素はもちろん、APIファーストを採用した企業がAPIを継続的に改善していくため、保守・運用のためのチーム体制を構築するという要素も求められる。
同社では毎年、大規模なアンケートを実施している。APIファーストでAPIを開発するメリットについて尋ねると、「パートナー連携が早い」「オンボードが早い」「生産性が高い」というメリットを挙げる人が多かったという。ちなみにオンボードが早いとは新しく開発チームに加わる人がターゲットのシステム開発に素早く取り組めることである。
APIファースト開発モデルの焦点は、最初にAPIの設計をしっかりしておくことだという。そして設計したAPIを、すべてのチームの中でコントラクト(契約)という形で全員が意識して、コードを書く前にAPIを設計・構築し、モック、ドキュメント、テストも作成する。「こうすることで、仮で動くモックサーバーを稼働状態にしておくと、モバイルのフロントエンドの開発をしながら、同時にドキュメントやテストも書くことができるなど、効率的な開発が実現します」(草薙氏)