APIを評価する重要な指標「TTFC」とは
API利用には障壁があるという。先に紹介したアンケートによると、API利用による障壁として、「ドキュメント不足」「APIの発見が困難」「時間がない」という回答がトップ3を占めた。「ドキュメントが不足すると、どういう動作をするのか分からない、どういう使い方をすればよいのかが分からない。また誰かがAPIを作っても、どこにあるか探しても見つからないとやはり使われない。APIをしっかり使って開発する時間も無い。そういう課題がAPI利用にはあります」と草薙氏は説明する。
APIを使って開発する指標にはさまざまなものがある。その中で草薙氏が最も重要と捉えているのが、Time To First Call(TTFC)である。TTFCはどれだけ短時間でAPIの初回呼び出しができるかを表すメトリクス。「開発者体験に関する指標」と草薙氏は語る。
API提供者はTTFCを分析してAPIの導入プロセスを改善し、その短縮を目指すことが求められる。具体的にはAPIを説明しているWebページの訪問やサインアップを起点に、最初のAPIコールまでの時間を測定する。Webサイトの閲覧からサインアップまでの時間がかかっているのであれば、Webサイトやドキュメントの品質に起因する可能性が考えられる。一方、サインアップから最初のAPI呼び出しまでに時間がかかっているのであれば、ガイドページの有効性や製品の使いやすさに起因する可能性があるというわけだ。
一般的に、多くの開発者は実際にAPIを使うことで、その機能の中身を理解し納得する。つまり開発者にとってファーストコールは重要なものだが、それ以前に離脱する様なことがあれば、活用される機会を逃すことになる。「TTFCを短縮することで、より幅広い開発者に自分たちのサービスを理解してもらえるようになる。だからTTFCは重要な指標なのです」(草薙氏)
TTFCはパブリックなAPIに限ったものではなく、社内向けのAPIにおいても重要な指標だという。
ではどのくらいのTTFCが適切なのか。「一概には言えないが、頑張って取り組んでいる企業は数分レベル」と草薙氏は言う。
TTFCを改善する施策の第1は優れたドキュメントを用意すること。必要な情報をもれなく盛り込むことが重要だ。第2にユースケースやサンプルを用意すること。利用者の抱える課題に対する正しい解決策かどうかを明確にするためだ。第3にプロセス上の障害を排除すること。認証情報の取得は避けられないが、その情報の準備にかかる時間やプロセスをできるだけシンプルにする必要がある。
第4に早い段階でAPIコールできる工夫をすること。「例えばサンドボックスを用意するのもその一つ。自由に試せる環境をあらかじめ用意しておくことで、機能を素早く理解してもらうことができます」(草薙氏)第5は外部ツールの利用。「APIプラットフォーム製品やノーコード/ローコードツールを使うことも、TTFC改善のアプローチの一つです」(草薙氏)