JiraやConfluenceに貯まったデータがAIに活用されるまでの裏側
Teamwork Graphは、Atlassian IntelligenceやRovoといったアトラシアンのAI機能の基盤となるデータレイヤーである。Jiraを使ったプロジェクト管理では、エピックで作ったゴールの下に、ユーザーストーリーやタスクが紐づいており、その進捗度合いなどの情報が溜まっていく。あるいはConfluenceでインシデント発生時の対応策を残しておくと、このナレッジを誰が作成したのか、これを誰が閲覧したのか、このナレッジはどのワークと関連しているのか、といった情報が溜まっていく。このように、各プロダクトで登録された情報やユーザーの行動履歴などを有機的に紐付け、AIが取り出しやすい形でデータを保有しているのがTeamwork Graphなのだ。
このTeamwork Graphを用いてアトラシアンのAI機能がどのように動いているのか。その概念図が以下である。

- アトラシアンのプロダクトでプロンプトを書くと、Atlassian Intelligenceに送信される。
- Atlassian Intelligence がTeamwork Graphをチェックして、この人がどのチームに所属していて、どのプロジェクトに入っているのか、普段どのような情報を見ているのか、といった基盤情報を取得する。
- Atlassian Intelligenceがプロダクトからコンテクストデータを収集する。
- 最初に書いたプロンプトに、Atlassian Intelligenceが2.3の情報を追加したうえで、修正したプロンプトを大規模言語モデル(以下、LLM)に送信する。
- Atlassian IntelligenceがLLMの応答を受け取る。
- Atlassian Intelligenceが5で受け取ったものをプロダクトに返す。
なお、アトラシアンが独自のLLMを保有しているわけではなく、ChatGPT・Gemini・Claude・Llama3、Mixtral・Phi-3を適宜振り分けながら利用している。ユーザーが書いたプロンプトはLLMには保存されず、データ学習に使われるようなこともないので安心だ。
上記のような仕組みのもと、Atlassian Intelligenceでできることをいくつか見ていこう。
- 分散した情報の検索と集約:Confluenceの検索窓に「DSAppで使用するフォントは?」と入力すると、「DSAppとはデブサミアプリのことである」と記載された用語集のページと、デブサミアプリのUI方針について書かれたページ内のフォントに関する記述が抜粋・統合されて、回答として表示される。
- 箇条書きを表に変換:箇条書きでつらつらと書き出した内容に対して、「アルファベット順に並べ替えて、表にして。日本語の説明に加えて、英語の説明も追加して」と指示すると、データの順序やフォーマットが整理され、英訳も追加される。
- Jira課題の改善、子課題の提案:例えば顔認証ログイン機能を実装したい場合。「サブタスクを提案」のボタンを押すと、必要なタスクを自動で洗い出してくれる。提案されたタスクの中から要・不要を選択したり、編集したりできるほか、「サーバーサイドの実装を追加して」といった追加のプロンプトを入力すると、新たなタスクが提案される。