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Developers Summit 2025 セッションレポート

スタートアップでQAチームをゼロから築いた3年──1人目QAが学んだ「個→チーム→組織」成長の法則

【13-C-7】スタートアップ1人目QAエンジニアがQAチームを立ち上げ、“個”からチーム、そして“組織”に成長するまで

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 品質保証を“文化”として根づかせるには、何が必要なのか。本セッションに登壇したのは、旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を運営する令和トラベルで、1人目QAエンジニアとして入社したmiisan氏(以下、miisan)。プロダクトのコアローンチ直前という混沌としたタイミングから、QAチームの立ち上げ、開発組織全体への品質意識の浸透、そして“誰か一人が頑張る”のではなく“チームで乗り越える”体制づくりまで。ノンストップで走り続けた3年間を振り返りながら、個から組織へと進化するための実践的な知見を共有する。

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「QAって何ですか?」からの出発点

 コロナ禍の真っただ中、旅行系スタートアップに「1人目のQAエンジニア」として飛び込む──想像するだけで険しい道のりだが、実際の現場はどうだったのか。そのリアルを共有してくれたのが、株式会社令和トラベルでQAチームをゼロから立ち上げ、3年かけて“個”から“チーム”、そして“組織”へと育て上げたmiisanだ。

 旅行アプリ「NEWT」の立ち上げに初期フェーズから参画したmiisanは、現在はQAエンジニアの枠を超えて、エンジニアリング戦略や組織文化の設計にも幅広く携わっている。

 「趣味は旅行とダイビング。先月も2週間ほどメキシコで遊んできました」と笑顔を見せるmiisanだが、入社当初の現場は、決して穏やかなものではなかった。

株式会社令和トラベル Head of Engineering Office/QA Group Manager miisan氏
株式会社令和トラベル Head of Engineering Office/QA Group Manager miisan氏

 当時の開発チームはエンジニアが約10人、QAエンジニアは彼女ひとり。そもそも社内に「QA」という職種自体が知られておらず、「Q&Aの略ですか?」と真剣に尋ねられることもあった。

令和トラベルに限らず、当時のQAへの意識は「インシデントが起こったあと、慌てて投資する」ような風潮だった
また、当時のスタートアップにおけるQAへの意識は「インシデントが起こったあと、慌てて投資する」ような風潮だった

 スタートアップにありがちな「まずは出す」が合言葉のような空気のなか、仕様書はなく、QA業務はPMやインターンがアプリを触ってみる程度。開発も品質保証も、手探り状態だった。

 さらに、miisanが入社したのは2022年4月1日。そしてわずか4日後には、プロダクトのコアローンチを控えていた。ちょうどコロナ禍から光が差し始めた時期で、抑えられていた旅行需要が復活の兆しを見せるなか、社内はお祭りムード。「品質保証に目を向ける余裕などないような状況だった」とmiisanは当時を振り返る。

 そこで彼女が最初に取り組んだのは、「品質保証の体制づくり」よりも先に、プロダクト開発の“方針”を掲げること。

 提示したのは、「品質とスピードはトレードオンできる」というビジョン。品質を守りながらスピードを上げる——言葉にすれば簡単だが、実現するには大きな壁があった。

 その象徴的な出来事が、コアローンチ後にリリースされた最初の新機能「銀行振込での支払い」だった。「比較的単純な機能」にもかかわらず、開発には20日以上を要し、しかもリリースされた機能には致命的な不備があった。アプリに表示されていた銀行口座番号が、なんと間違っていたのだ。

 たったひとつのリリース、たったひとつの機能で、絶対にあってはならないミスが発生した。この出来事が、miisanの「1人目QAエンジニア」としての本当のスタートだった。

リードタイムは長く、開発生産性は低く、致命的なインシデントは起こる——理想とは程遠い状況だったが、ここからmiisan氏の快進撃が始まる
リードタイムは長く、開発生産性は低く、致命的なインシデントは起こる——理想とは程遠い状況だったが、ここからmiisanの快進撃が始まる

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半年でやりきった、最初の一歩

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この記事の著者

夏野 かおる(ナツノ カオル)

 博士。本業は研究者。副業で編集プロダクションを経営する。BtoB領域を中心に、多数の企業案件を手がける。専門はテクノロジー全般で、デザイン、サイバーセキュリティ、組織論、ドローンなどに強みを持つ。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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