組織として非連続な成長を追う
miisanの奮闘が実り、令和トラベルは40人規模の開発組織と6人体制のQAチームを抱える組織へと成長した。プロダクトのスコープも、国内ホテル事業を含めてさらに拡大。まさに勢いに乗った状況だが、miisanがこの段階で向き合っているのは、未来を見据え「組織としてどう成り立たせるか」という問いだ。
まずは来たるべき成長に備え、体制をそれまでの3チームから、ミッション別の少人数チームに再編。さらに、プロダクト開発に集中できる環境を整えるため、横断的な組織の設計にも取り組んだ。

次に取り掛かったのは、「大胆な基盤変更」だ。週1回だったリリース体制は、毎日リリース可能な体制へと転換。テスト環境もステージング1つだけの運用から見直し、QAチームを介さずとも各チームが自律的に検証できるような仕組みを整備した。
さらには、「専門性の分解」にも注力。チームをミッションごとに細分化することで、プロダクト開発への集中度を高めた。技術的負債の蓄積を防ぐため、テックリードと協力して技術課題を洗い出し、優先順位をつけてロードマップを策定。QAチームもそこに連携し、技術的なブロッカーを未然に潰すような働きかけを行ってきた。
また、広がり続ける回帰テストに対処するため、テスト自動化への投資も積極的に進めてきた。早期から自動化に取り組むことで、手動テストの限界を超える体制を整備していったという。
そしてもう1つ、miisanが特に重視したのが「カルチャーへのコミットメント」だ。
初期に掲げた「品質とスピードはトレードオンできる」という理念。単なる標語として終わらせず、組織の価値観として継承していくために、組織基盤を担うチームを再構築。miisan自身がその設計・運用を担っている。
こうした取り組みの成果、急激な成長のなかでも、障害発生率やリードタイムといった指標をほとんど変えずに維持できている。かつては週1リリースですら苦労していたチームが、いまでは1日に複数回のリリースをこなすまでに変化したというから驚きだ。

miisanはこう語る。「『組織になる』というのは、一人では実現できなかったことを、仲間とともに実現できるようになること。ただ、これはQAチームだけで成し遂げたわけではない。組織全体に"QAの文化"が根付いたからこそ、可能になったのだと思う」
社内文化が変化した結果、かつてはmiisanがいなければ回らなかったスクラムも、プロジェクトごとに自走するように。まさに、チームが主体的に進んでいける状態へと辿り着いたのだ。
仲間と描く、品質文化の未来
かつては致命的なインシデントを出していたチームが、今では毎日リリースができるほどの組織へ。品質の向上が事業成長にも直結する──それをチームとして証明してきたmiisanがいま、一人で奮闘している誰かに伝えたいのは、「QAエンジニアという役割は、自分で定義していい」というメッセージだ。
「『テストをする人』『最後の砦』そんなイメージに縛られる必要はない。役割の枠にとらわれず、自分が届けたい価値を自ら形にしていくこと。その姿が、きっと次の誰かの挑戦を後押しするはずだ」(miisan)。
miisan自身は、1人目の人材として「後に続く人の道を広く整えること」が最も大切な使命だったと語る。彼女がつくった基盤の上で、いま多様なバックグラウンドを持つQAメンバーが、自由に、力強く動いている。それはまさに、目指してきた“チーム”の姿だった。
QAエンジニアの力だけでは、品質保証は成り立たない。始まりは“個の力”だったとしても、継続していくには“チームで乗り越える”ことが必要だ。そうして見えてくる光景は、一人では決してたどり着けなかった景色に違いない。