ただの評価AIで終わらせない、自己成長につなげる設計思想
こうしてAI-mは、次のような機能を備えたサービスとなった。
- スマートフォンやタブレットを用いて、生徒が模擬面接に回答している様子を撮影・録画する
- 話す速さや表情、つまずきといった非言語的要素や、話の構成や内容の論理性などをAIが分析して、フィードバックを提供する
- 面接動画や文字起こしを見返して、具体的な改善点を把握できる
なかでも最大の難所は、「AIで何を学生に届けるか」の設計だったと三木氏は語る。単にAIが評価するだけではなく、自己成長につながる気づきや納得感を与えたいと考えたのだ。
そこで、その評価に至った具体的な根拠を示すとともに、「声が小さい」とネガティブな指摘だけをするのではなく、「落ち着きのある話し方である」などポジティブな視点のフィードバックも加え、良い点と改善点のバランスを取ることにした。生徒が納得感をもってAIの評価を前向きに受け止め、自己成長につなげられるよう、“徹底的にこだわっている”という。
その「徹底的なこだわり」とはつまり、現場の声に応じてAIの評価基準が随時見直され、仕様が変化し続けることを意味している。実際、「昨日決まった仕様が、今日には変わる」ことも珍しくなく、「仕様変更は日常茶飯事だ」と三木氏は語る。「だからこそAI-mには、アジャイル開発で短いスプリントを繰り返しながら、柔軟に修正を重ねるスタイルが合っていた」。
ときには情報連携がうまくいかず混乱が生じたり、想定外のトラブルによってアーキテクチャレベルでの仕様変更を余儀なくされたりするなど、AI-mの開発は常に「困難にぶつかっては立ち止まり、考え直し、また前に進む」という “揺れ”のなかにあったという。そのようななかでも絶えず前進を続けられたのは、「正解がない中でもユーザーにとって意味のあるものを届けたい」という共通の想いが、原動力としてチームを支えてきたからだ、と三木氏は強調する。
2024年9月に1期リリースを果たし、2025年7月より2期リリース中であるAI-mは、来年に控えた3期リリースに向けて、鋭意新機能を検討中だ。すでに1期リリースの時点で178校から利用申し込みがあり、23,105名分の生徒アカウントが作成されている。実際に利用した生徒のアンケート結果を見ると、「面接力向上の役に立った」「AIによるフィードバックに納得感があった」と答えた生徒は約7割にのぼるなど、反響は上々だという。

「期を重ねるにつれ、リリースサイクルは“回すもの”から“回り続けるもの”になっており、チームが強くなっているのを実感している。ユーザーの声を次の一手の出発点として、すぐに開発・実装へとつなげていく。このスピード感と柔軟性こそが我々の強み。今後は面接練習にとどまらず、教育の可能性を広げる基盤として進化していく。これからも教育現場の『いま』に寄り添い、より良い『未来』を共につくっていきたい」と三木氏は締め括った。
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