パターンマッチ
ここでは、前編と中編で簡単に紹介したScalaのパターンマッチについて、詳細を解説したいと思います。
パターンマッチは、強力な条件判断を行うための仕組みです。JavaやC言語のswitch文と異なり、型によるマッチやif文によるパターンガード、ケースクラスと組み合わせたオブジェクトの構造に対するマッチなど、簡潔な記述でさまざまな方法で条件判断を行うことが可能です。
パターンマッチの基本
パターンマッチは、match式を用いて記述します。基本的な書式は次のとおりです。
値 match { case パターン1 => { 処理1 } case パターン2 => { 処理1 } case ... case _ => { どのパターンにも当てはまらない場合 }
さて、具体的なパターンの記述方法ですが、次のようにさまざまなパターンが記述できます。
種類 | 記述例 | 説明 |
ワイルドカードパターン | case _ | あらゆるものにマッチ。ようはdefault。 |
定数パターン | case "foo" | "foo"など値にマッチ。 |
変数パターン | case n | すべてにマッチするが、マッチした結果をnという変数名で束縛して使える。 |
型付きパターン | case d:Double | Double型の場合にマッチ。 |
パターンガード | case n if n % 2 == 0 | ifで条件を指定。例では偶数のみマッチ。 |
コンストラクタパターン | case Foo( s, n ) | caseクラスであるFooクラスにマッチし、Fooクラスのプロパティを変数s, nに束縛する。 |
具体的な例を見てみましょう。以下のmatchTestメソッドはAny型の引数をとり、パターンマッチで型の判定を行う単純な関数ですが、上記の表で紹介したパターンをほぼすべて使用しています。
def matchTest( v:Any ) = v match { case n:Int if n < 0 => "負の整数です" // Int型の型付きパターンとパターンガード case n:Int => "正の整数です" // Int型の型付きパターン case s:String => "文字列(%s)です" format s // String型の型付きパターン case 3.14 => "Double型の値3.14です" // 3.14という定数パターン case Some( x ) => "Option型で値は%sです" format x // ケースクラスOption型のコンストラクタパターン case x:AnyRef => "%s型の値%sです" format ( x.getClass ,x ) // AnyRef型の型付きパターン case _ => "どのパターンにもマッチしません" // ワイルドカードパターン }
では、リスト13のmatchTestメソッドをREPLで定義して、さまざまな値を渡してみましょう。
scala> matchTest( 10 ) res1: java.lang.String = 正の整数です scala> matchTest( -99 ) res2: java.lang.String = 負の整数です scala> matchTest( "hogefuga" ) res3: java.lang.String = 文字列(hogefuga)です scala> matchTest( 3.14 ) res4: java.lang.String = Double型の値3.14です scala> matchTest( Some( List( 2,3) ) ) res5: java.lang.String = Option型で値はList(2, 3)です scala> matchTest( new Date ) res6: java.lang.String = class java.util.Date型の値Fri Jun 18 18:26:48 JST 2010です scala> matchTest( null ) res7: java.lang.String = どのパターンにもマッチしません
引数の型や値によって、処理が分岐していることが確認できると思います。このように、パターンマッチはこれまでのswitch文やif文を組み合わせて記述していた条件分岐をすっきりとまとめて書くことができるのです。