同イベントの趣旨は、マイクロソフトの次期クライアントOSである「Windows 8」と、その上で動作する「Metroスタイルアプリ」に関する技術情報を、アプリケーション開発者に広く提供することにある。
2日間の開催期間中、約90のセッションが行われたが、本稿ではその中からイベント初日の冒頭で行われた、米マイクロソフト Windows&Windows Live担当プレジデント スティーブン・シノフスキー氏によるキーノートセッション「次世代Windowsプラットフォームの可能性」の内容を紹介する。マイクロソフトのWindows部門を統括する立場にあるシノフスキー氏自らによるWindows 8の紹介とともに、今後のリリーススケジュールについての重要な発表も行われた。
新たなユーザー体験を提供するWindows 8とMetroスタイルアプリ
「Windows 8は、Windowsの“再創造”だといえる。堅牢で高いパフォーマンスを持つWindows 7をベースにしながらも、新たなデバイスのサポートやユーザー体験の提供、さらに強固で多彩なアプリケーション基盤を新たに実現している」
シノフスキー氏は、Windows 8の登場がもたらす価値についてこのように述べる。Windows 7からの主な強化ポイントとして同氏は、複数アプリケーションの連携基盤やSkyDriveとの連携、Metroスタイルアプリのマーケットプレイス「Windowsストア」、IEの次期バージョンであるIE10などを挙げた。また、動作の高速化やメモリ消費量の低減、パワーユーザー向けのきめ細かい使い勝手の実現など、OSとしての基本機能も大幅に強化しているという。
しかし、現時点で最も注目を集めているWindows 8の特徴といえば、やはりMetro UIをベースにした新たなユーザー体験の提供だろう。本セッションでは、2012年2月に提供開始されたばかりのWindows 8 Consumer Preview(β版に相当)を実際に使って、日本マイクロソフト Windows本部 本部長 藤本恭史氏によるデモが行われた。
藤本氏は、任意の画像の特定部分をタッチ操作でなぞることでパスワード認証を行う「Picture Password」という新たな認証機能を使ってWindows 8のデスクトップ画面にログインした後、Metro UIのさまざまな操作を行ってみせた。実際に複数のアプリをタッチ操作で起動・終了させたり、分割表示させたりと、Metroスタイルアプリの直感的な操作性をアピールする。
「このように、Metro UI上のユーザー体験ではアプリが主役になる。皆さんが開発するアプリこそが、Windows 8のユーザー体験に大きな力を与える」(藤本氏)
また、Windows 8にデフォルトで用意されているアプリを使って、SkyDriveやFacebook、flickrといったクラウドサービス上に保管してあるデータを、PC上にローカル保存されているデータとまったく同じように操作できることを示した。
「このように、ユーザーはクラウドサービスをそれと意識せずに、ローカルアプリと同じ感覚で利用できる。このように、異なるアプリやサービス同士が連携して、それぞれが持っている付加価値を1つにまとめて提供できるのがWindows 8の大きな特徴だ」(藤本氏)
このほかにも、UIやパフォーマンス、タブレット端末上での使い勝手が大幅に向上したIE10の動作や、既存のWindows 7環境と同様のデスクトップ操作を可能にする「デスクトップモード」など、Windows 8のさまざまな機能のデモが披露されたが、中でも特に参加者の興味を惹いていたのが、USBメモリの中にWindows 8の環境を丸ごと入れて持ち運ぶことができる「Windows To Go」という機能だ。藤本氏は、実際にUSBメモリからWindows 8環境をブート、その後USBメモリをいったん抜き、再び差した後に動作が再開する様子を実演してみせた。このデモを見た一部の参加者からは、感嘆の声も挙がっていた。