対象読者
Androidアプリケーションの開発を始めたい方で、JavaとEclipseの基本的な知識がある方を対象とします。
Web APIを利用するには
前回説明したように、AndroidアプリからWeb APIを呼び出す場合、HTTP通信を行うため、メインのスレッドとは別のスレッドで、非同期に処理するようにします。
Androidアプリで、スレッドを作成して非同期処理をあつかうには、いくつかのアプローチがあります。そのなかで従来(Android 3.0まで)は、Android SDKで提供されるAsyncTaskというクラスを直接利用するのが一般的でした。
AsyncTaskクラスでは、メインのUIスレッドとは別の非同期処理と、UIスレッドへ実行結果を通知する仕組みが用意されています。前回少し触れた、別スレッドからのUI操作の問題も、このクラスを利用することで回避でき、手軽に非同期処理が実装できます。
ただAndroid 3.0からは、非同期処理をより汎用的にあつかうために、Loaderという仕組みが追加されました。Loaderクラスはその名前が示すとおり、非同期にデータを読み込むための抽象クラスで、ActivityとFragmentで利用できます。
本連載では、このLoaderを利用した方法を解説していきます。なお、Android 3.0未満でも、Support Libraryという互換ライブラリが用意されていますので、そのライブラリを利用すれば、Loaderが利用できます。ただし、本連載で解説するソースは、Android 4.0以降での動作のみを想定するものとします。
AsyncTaskLoaderとは
AsyncTaskLoaderクラスは、Loaderのサブクラスで、従来のAsyncTaskクラスの機能を提供します。AsyncTaskでは、非同期処理とUIスレッドへのアクセスができるため、便利な反面、UIに対する処理が分散しやすいという欠点がありました。やはり同じUIに対する処理は、1つにまとめたいところです。
AsyncTaskLoaderでは、この問題をActivityに対してコールバックするメソッド(インターフェースの実装)を用意することで解決しています。
ActivityクラスでLoaderCallbacksインターフェースを実装すれば、非同期処理の各イベントに応じて、決められたメソッドが呼び出されます。このメソッドのなかで、非同期処理の進捗表示や、処理完了時のViewの更新処理を記述するようにします。
AsyncTaskLoaderを利用することで、ActivityのUI制御と非同期の処理を、きちんと分けて記述できるようになりました。
AsyncTaskLoaderの使い方
では、もう少し具体的なソースを示して、AsyncTaskLoaderクラスの使い方を見ていきましょう。なお今回は、AsyncTaskLoaderを利用するコードに絞って解説します。アプリ全体については、次回以降、説明することにします。
Loaderを利用した実装の流れ
Loaderを利用する際には、次のような手順で実装します。
- 非同期処理を行うLoaderクラスのサブクラスを作成する。
- LoaderManagerクラスを使ってLoaderを初期化する。
- Loaderを実行するコードを追加する。
- ActivityにLoaderCallbacksインターフェースを実装し、LoaderCallbacksの各メソッドにコードを追加する。
LoaderManagerクラスとは、複数のLoaderインスタンスを、Activity(またはFragment)で管理するための抽象クラスです。Activityでは、直接Loaderを使うのではなく、LoaderManagerを通して、Loaderを操作します。
HTTP通信用AsyncTaskLoaderの作成
まずは、非同期でWeb APIを呼び出すクラスを作成します。ここでは、AsyncTaskLoaderを継承したHttpAsyncLoaderという名のクラスを作りました。通常、AsyncTaskLoaderはそのまま使うのではなく、必要に応じてサブクラスを作成します。
public class HttpAsyncLoader extends AsyncTaskLoader<String> { private String url = null; // WebAPIのURL public HttpAsyncLoader(Context context, String url) { super(context); this.url = url; } @Override public String loadInBackground() { // ここでWebAPIの呼び出し(HTTP通信)を行う return null; } }
非同期処理を追加するには、loadInBackgroundメソッドをオーバーライドし、このメソッドのなかでWeb APIの呼び出しを記述するだけです。なお、AsyncTaskLoaderを継承した場合、loadInBackgroundメソッドの処理結果を示す型を指定する必要があります。
このサンプルでは、HTTP通信の応答結果をそのまま文字列として返すために、Stringとしています。実際には必要に応じて、Web APIの実行結果を格納するクラスなどを指定します。