さらに遊んでみる
組み込み基盤を使ったサーバ作成となると、敷居が高く感じてしまいがちですが、驚くほど簡単に環境が構築できたので驚いた人も多いでしょう。Raspberry Piはもともと学習用に開発されたボードで、小さな子どもでも容易に導入することができるさまざまな工夫がされています。しかし、これだけでは「大きな子ども」の皆さんの好奇心を満たすには、やや物足りない感じもします。ここから、構築したミュージックサーバをさらに面白くしてみたいとおもいます。
無線LANですっきり接続
有線LANで接続していると、持ち運びに苦労するのでリビングで、寝室でといろいろな場所で楽しみたいときに不便です。そこで、無線LANアダプタを使ってネットワーク経由で通信させるようにします。なお、あらかじめ家庭内のプライベートネットワークにWifiルータが設置されている必要があります。
Raspberry PiのUSBポートに、無線LANアダプタを接続します。筆者はBUFFALOのAirStation WLI-UC-GNMを使いました。
次にブラウザでVolumioの設定画面を開き、 [MENU]-[Network]を選択します。[Wi-Fi Setup]の項目で、自宅のWiFi環境のSSIDとセキュリティ設定を行い、[SAVE CHANGES]ボタンをクリックします。
有線LANケーブルを外して、Raspberry Piを再起動します。これで無線LANによるネットワーク接続が可能になります。
スマートフォンをリモコンに!
無線LANで配線もすっきりして持ち運びも可能になったので、パソコンからの操作だけでなく、スマートフォンをリモコンにすることもできます。Raspberry Piと同じWiFiネットワークにあるAndroidやiPhoneのブラウザからVolumioを操作することができます。
なお、URLは
http://Raspberry PiのIPアドレス/
でアクセスしてください。
Volumioは、MPDがデーモンで動いていますので、MPDクライアントアプリを使ってアクセスすることもできます。
Andoridの場合、GooglePlayで「MPD」と検索するとさまざまなMPDクライアントアプリを見つけることができます。筆者はフリーの「MPDroid」をインストールして使用しました。設定はアプリによって異なりますが、必要な情報はRaspberry PiのIPアドレスなどになります。Volumioのブラウザによる操作より、専用のアプリのほうがいろいろ細かい設定や操作をすることができますので、お好みのアプリを試してみてください。
iOSの場合は、AirPlayを使うことができます。AirPlayは、iPhone/iPadなどiOSのデバイスで再生している音楽などを、ネットワーク経由で他の機器で再生することができる機能です。iPhoneで利用するときは、画面を下から上にスワイプするとAirPlayの設定ボタンが表示されますので、そこでiPhoneと同じネットワーク内の [Volumio]を選択します。再生ボタンを押すとRaspberry PiからiPhoneに保存された音楽が再生されます。
より良い音で楽しむUSB-DACの作成
パソコンで音楽を再生するときは、WAVやMP3、AACなどのデジタルデータとして記録された音楽ファイルを、ヘッドホンやスピーカーなどのアナログで聴くためにアナログデータに変換します。
Raspberry Piは本体に音楽再生機能を備えており、そのままでも曲を聴くことができます。しかし、このデジタル=>アナログ変換を行う専用の機器で行ったほうが、より高音質で音楽を楽しむことができます。USB-DACとは、USBから入力したデジタルデータをアナログ変換するための機器です。オーディオにこだわりのある人は、このDACにお金をかけてより良い音質で音楽を楽しむのですが、これも手作りしてみましょう。
秋葉原にある電子部品ショップである「秋月電子通商」が販売している「USBオーディオDAコンバーターキット」を使うと、電子工作がはじめての人でも簡単に手作りできます。
キットには、基盤をはじめUSB-DACを作成するのに必要なコンデンサーや抵抗などがすべてそろっていて、回路図どおりに、丁寧にはんだ付けを行えば、30分ほどで完成します。価格は1700円です。
なお筆者は、キットに同梱されている一部のコンデンサーを別のものに変更しています。
Raspberry PiのUSBポートと、作成したUSB-DACのUSBポートを接続し、USB-DACの出力である赤白のRCAジャックを手持ちのスピーカーにつなげば完成です。とても手作りとは思えない良い音で、音楽を楽しむことができます。
古いアンティークラジオでレトロなケース作成
Raspberry Piを基盤むき出しのままで使用すると、ほこりがたまったり、うっかりショートさせてしまったりする恐れがあります。1000円程度でRaspberry Pi専用のケースを購入することもできますが、それではちっとも面白くありません。
今回は、古い壊れたアンティークラジオをケースとして利用します。アンティークラジオは、実家に昔使っていたものが残っていればそれを利用してもよいですし、蚤の市やネットオークションなどで掘り出し物をみつけることもできます。筆者はパナソニックの古いトランジスタラジオを使いましたが、真空管ラジオのケースなどを使えば、インテリアとしてもとてもおしゃれです。
ケースとして使いたいアンティークラジオを、分解します。中のトランジスタ等は不要ですので、Raspberry Piを格納するスペースを確保するため、丁寧に取り外します。電源ケーブルや音声出力のRCAジャックを出す穴がすでにあれば良いですが、もしなければケースにドリルなどで穴をあけましょう。基盤を傷つけますので、穴をあけた場所は綺麗にやすりをかけましょう。
見た目は古くてレトロだけど、中身はインターネットラジオを聴くことができ、AirPlay対応、USB-DACを使って高音質な音源を楽しめるネットワーク対応の最新ミュージックサーバというギャップも面白いですよね。
おわりに
小型のシングルボードコンピュータであるRaspberry Piを使って、ミュージックサーバを作成しました。アイデアや工夫次第で、時間やお金をかけなくてもいろいろ楽しめることがお分かりいただけたかと思います。今日、ウエアラブルデバイスやスマート家電などモノのインターネット化(IoT)が広がり、技術と技術の組み合わせや、アイデアと技術の組み合わせで、これまでになかった新しいものがどんどん生まれています。
今回ご紹介したRaspberry Piを使ったミュージックサーバも、1つ1つの技術要素は、決して新しいものではありませんので、Linuxサーバ構築や家庭内ネットワークを敷設した経験がある人であれば、特に苦労する点は無かったのではないでしょうか。
安定した技術ばかりを使っている業務システムの開発プロジェクトに参画していると、時に、ものづくりがつまらないと感じてしまうことがあるかもしれません。しかしながら、世の中を驚かせる新しいものは、かならずしも最新の技術ばかりを使っているわけでなく、むしろちょっとしたアイデアや既存技術の組み合わせから生まれています。皆さんも、Raspberry Piを使って、どんどん面白いことに挑戦してみてくださいね。