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開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー

「プランニングポーカー」で見積もりをカイゼンする〜チームで仕事のボリュームを見立てる

開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー 第4回


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DIFF(差)にも注目しよう

はじめのうちはコンテキストが一致しなかったり、スキル差のためにカードの数値が完全一致することは少ないでしょう。数値の絶対値よりもメンバー間の数値の差の方が重要です。2と3という小さな開きなのか、2と13という大きな開きなのかを見ましょう。大きければ、目指す品質の差だったり、知識の差だったり、リスクや不安の大きさが隠れていることを表しています。差を露呈できていること良しとし、議論や対話を繰り返し作るプロダクトのイメージを合わせていきましょう。

はじめのうちは、メンバーによってコンテキストが一致しなかったり、スキルに差があったりするために、カードの数値が完全一致することは少ないでしょう。数値の絶対値よりもメンバー間の数値の差の方が重要です。「2と3」といった小さな開きなのか、「2と13」といった大きな開きなのかを見ましょう。

 大きければ、目指す品質の差や、知識の差、リスクや不安の大きさの差が隠れていることを表しています。差を露呈できていること良しとし、議論や対話を繰り返してプロダクトのイメージを合わせていきましょう。

 また、メンバー間の数値の差だけでなく、個人の差も長期的に見ていきましょう。若手メンバーの見積もりスキルがどう変化したかを、プロジェクト開始前と後で比較してみるのです。プランニングポーカーを通してチームで見積もることで、多くのことを任せられるように成長しているのではないでしょうか。

エピローグ

 えん魔のプランニングミーティングが終わってから、鎌倉さんを除くメンバーでプランニングポーカーを行った。タスクの規模感を見積もりし、実現可能なようにアサインし直していく。

「いやー、他の人がタスクをどう捉えていたのか分かって面白かったよ」

いつもの、あんまり深く考えていない感じの片瀬さんも戻ってきていた。

「確かに。こんなに見立て違いがあるなんてね。当然だけど得意しているところがそれぞれ違うわけだし」

「……和田塚さん、みんな、ありがとう」

 私なんかより何十倍も察しの良い御涼さんは、普段お母さんのような役回りでチームに決して弱みを見せない。このキャラが壊れないよう、みんなが気を使っていることに、御涼さんも気がついていた。

 そして、またスプリントプランニングの日がやってきた。プランニングの前にポーカーしないと、アサインの意味がない。鎌倉さんが前回同様に始めようと藤沢さんに声をかけようとしたその時を狙って、私は立ち上がった。

「鎌倉さん、今回のアサインの前に、プランニングポーカーを行っても良いでしょうか」

 私より早く、そして力のこもった口調で御涼さんが声をあげた。みんなに緊張が走る。どうなる? 鎌倉さんは?

「良いよ」

え?

「では、さっそく、丸くなってテーブルを囲んで。ポーカーは和田塚さん持ってきてくれますか」

 テキパキと、御涼さんを中心にみんな動き始める。何、この展開の早さ。なんかもう一悶着とかないの? きょとんとしていたであろう、私の顔を見て、御涼さんがにっこりとした。

 自分のためだけだったら、ただただ抱え込んでいたけど、チームのためなら声を挙げないといけない、御涼さんがそう言っているのが私には分かった。私はうれしさがこみ上げてきた。

「はい! もちろん!」

今回の原則の解説:全員で考え抜く

 今回のテーマ「見積もり」でのカイゼンにおける原則は、「全員で考え抜く」です。以下の3点を押さえておきましょう。

  • 個々の判断や個人の能力ではなくチームの総力で見立て、多様なスキルを惜しみなく出す
  • 背景やコンテキストや意義を共有しながらチームのコミュニケーションの量を増加させ盲点やリスクを減らし質を上げる
  • 長期的な成長も視野に入れ、チームでパフォーマンスをアップさせる

本連載を深く理解するには、書籍『カイゼン・ジャーニー』の併読がオススメ!

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カイゼン・ジャーニー
たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

著者:市谷聡啓、新井剛
価格:2,484円(税込)

【連載との違い】

CodeZineの連載では、現場におけるチーム活動でのシーンを想定して実践的な作りにしていますが、コンパクトにまとめているため、個人が根本を深く理解するのに向いていません。理論や原理原則を体系的にまとめた書籍『カイゼン・ジャーニー』を精読いただくと理解が深まり、より生きた知識が身につきます。ぜひお買い求めください!

実践編セミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニー」開催!

 CodeZine Academyにて、著者の市谷氏、新井氏を講師に迎えたセミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニーを開催します。「講義」と「ワークショップ」で、書籍や連載の内容をさらに実践的に学ぶことができます。以下の通り、申し込み受付中です。

  • 開催日時:2019年7月12日(金)10:00~18:00
  • 受講料金:54,000円(税抜価格50,000円)
  • 場所:株式会社翔泳社 セミナールーム
  • 詳細・申し込み:https://event.shoeisha.jp/cza/20190712

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この記事の著者

市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

 ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

新井 剛(アライ タケシ)

 株式会社ヴァル研究所 SoR Dept部長/株式会社エナジャイル 取締役COO/Codezine Academy Scrum Boot Camp Premiumチューター CSP(認定スクラムプロフェッショナル)/CSM(認定スクラムマスター)/CSPO(認定プロダクトオーナー) Javaコンポー...

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