当日の進め方
「何が始まるんだ?」という好奇心の目よりも、不安な目をした参加者がほとんどでしょう。でも会社を良くしたい思いを持つ人は一定数いるはずです。それを信じて、これから始まる場を楽しみながら支えていきましょう。
講演:社内の研究や成果発表
「まずはハンガーフライトとして、現場でキラリと光るエッジの効いた成果発表を用意しました。みんなで発表を聞きましょうか」
オープンスペーステクノロジー開始
「素晴らしい成果発表をありがとうございました。皆さま、拍手をお願いします。では次にオープンスペーステクノロジーに入っていきます!」
オープニング:サークル状の席で本日の流れやグラウンドルール(3つの役割と4つの原則)の説明
「3つの役割を説明しますね。まずは"さえずる鳥"、テーマを提案する人たちです。2つ目の"群がる蜂"はテーマに群がる人たちのことです。対話の中で議論をしていきましょう。最後は"飛び回る蝶"で、セッションを渡り歩く人たちです。他のセッションで出てきたアイデアなどを持ち込みましょう。次は4つの原則です。だれでもが適切な参加者で、いつ起ころうとそれが適切なタイミングで、どこで起ころうとその場所が正しく、なにが起ころうとそれが全てなのです」
テーマ出し:話し合いたいテーマの書き出し
「各自、課題やアイデアなどのテーマをA3用紙に大きく書き出しましょう。いま思いついたことでも全然構いません」
テーマ発表:話し合いたいテーマをサークルの中心で発表
「書き終わった人から、テーマの概要や背景を簡潔に1分位で述べてください。参加者を募集するためのアピールタイムですよ」
マーケットプレイス作成:タイムテーブル表にテーマを貼り出す
「発表した人から、壁の表(マーケットプレイス)にテーマを書いたA3用紙を貼っていきましょう。縦軸が時間、横軸がセッション場所になっています。好きなところに貼ってOKですよ」
マーケットプレイスで参加表明:参加したいテーマに登録
「掲げられているテーマを見に行きましょう。参加したいセッションの時間と場所を確認し、自分の名前をサインアップしましょう」
サークル席の解体:セッション用に設営を全員でやりましょう
「いま設置してあるサークル状の椅子を、各セッションの場所に移動させましょう。積極的に貢献してくれる人がたくさんいて心強いです」
ファーストセッションに移動:サインアップしたテーブルに移動
「ではファーストセッションをスタートするにあたり、各自サインアップしたテーブルに移動してください」
セッションの誘導:部材を自由に使うことを推奨
「議論が空中戦にならないように、また、途中からセッションに参加した人にもその経緯が分かるように模造紙や付箋紙を使って軌跡を残していきましょう。落書きするように自由に使ってください。付箋紙に書く、話す、貼る、全員の手を動かすことで貢献しましょう。議事録係ではなく全員で貢献していくのです。上司や部下の関係ではなく、会社の課題を解決する仲間がそこにはいるはずです」
セッション開始:ファーストセッションスタート
「ではテーマの発表者の"さえずる鳥"さんがテーマを簡潔に述べて対話をスタートさせてください」(40分間のセッションを見守る)
セッション終了:ファーストセッションの終了
「♪ジリリリリ。40分が経過しました。タイムテーブルの次の時間がやってまいりましたよ。継続するのも自由です。次のセッションに移るのも自由です。4つの原則の”いつでも”を覚えてますか?」(ひとつ上の手順に戻り、タイムテーブルの時間枠だけ繰り返す)
情報の共有
「はじめのサークル状になるように椅子を各自お持ちください。セッションのテーマを出した方にお願いがあります。Aテーブルの最初のセッションから順番に、議論の過程やアクションプランを発表して、全体に共有してくださいますか」
マーケットプレイスでドット投票
「共有されたアイデアに賛同・共感・協同したい提案に、ドット投票しましょう。今回、ひとり3票です」
投票結果の発表
「投票順位の高いものを上位から発表します。投票した人は挙手をお願いできますか?これらの方々と一緒にそのアクションを実施してください」
クロージング
「みなさんの熱量に感謝いたします。ここで起こったことが我々の力です。みなさん各自のリーダーシップ・フォロワーシップのもと、今から活動に移していきましょう」
ちょっとしたコツ
オープンスペーステクノロジーを実施する際、下記の点に注意すると良いでしょう。
グラウンドルールは大事だか制約ではない
既存の縦割り構造や役職による権限の秩序を打破するためにあるルールです。決して縛るものではなく、心理的安全な場で自由闊達なアイデアを生み出すために存在しているのです。
運営はコントロールしすぎない
混乱もまた必然です。自己組織化が発生するように、考えさせるように促し、介在しすぎずに耐えて、場の自主性を温かく見守りましょう。
開催できたこと、人が集まったことは大きな一歩で成功事例であることを強調する
提案者、参加者、運営の協力者に感謝して、ハイタッチで解散しましょう。明日のために笑顔になれるはずです。
エピローグ
私は呆然としていた。嫌な汗が手のひらに湧いてくる。胸の中は早鐘が打たれることもなく、ただ静かにその風景を眺めているだけだった。
ハンガーフライトに参加しにきてくれたのは、私たちのチームの人数よりも少ない、わずか2人だけだった。
私は目の奥からじわりじわりと込み上げてくるものを感じた。私たちの思いは、会社には届かなかったのだ。
今回の原則の解説:場をつくる
今回のテーマ「オープンスペーステクノロジー」の背景にある原則は、「場をつくる」です。以下の3点を押さえておきましょう。
- 「場」により想定外のダイナミックな会話・刺激・共感により、次の行動への展開が生まれる
- 縦割り組織のポジショントークではなく、フラットな課題解決のハブが立ち上がる
- 出てきた課題が現場の最大の関心事であり、新たなリーダーシップによって共感と熱量と行動力が生まれる
本連載を深く理解するには、書籍『カイゼン・ジャーニー』の併読がオススメ!
実践編セミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニー」開催!
CodeZine Academyにて、著者の市谷氏、新井氏を講師に迎えたセミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニー」を開催します。「講義」と「ワークショップ」で、書籍や連載の内容をさらに実践的に学ぶことができます。以下の通り、申し込み受付中です。
- 開催日時:2019年11月27日(水)10:00~18:00
- 受講料金:50,000円+税
- 場所:株式会社翔泳社 セミナールーム
- 詳細・申し込み:https://event.shoeisha.jp/cza/20191127