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レガシーな業界だからこそテクノロジーで大きく変えられる――医療×Techの未来を作るメドレーのエンジニアに聞く

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2019/12/26 12:00

 医療の世界はまだまだIT化が浸透していない。そのようなレガシーな業界が抱えている課題を、試行錯誤しながらテクノロジーやエンジニアリングで解決に取り組んでいるエンジニアがいる。なぜ、そのような業界に飛び込むことになったのか。そこでどういうキャリアが築けるのか。医療業界をはじめとした社会課題の解決に取り組んでいる3人のエンジニアに、医療業界で働くことの面白さや醍醐味、キャリアの考え方などについて話を聞いた。

医療ヘルスケア業界が抱える課題をテクノロジーで解決

 FinTechやEdTech、SportsTech、AgriTech、MediTech……。これらはICTと既存産業を組み合わせることで出現した新しい業界で、X-Tech(クロステック)と呼ばれる。

 医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY」、クラウド診療支援システム「CLINICS」、医療介護分野の人材採用プラットフォーム「JobMedley」などのテクノロジーを活用した医療分野のプロダクトを提供するメドレーは、そうしたX-Tech企業の1社である。

 医療ヘルスケア業界は、急速な高齢化の影響で、そのシステムの維持が限界に来つつある。すでに40兆円を超えるまでに膨れ上がっている医療費は、2025年度には約58兆円にのぼると試算されている。50年前までは、65歳以上の高齢者を1人支えるのに約10人の現役世代がいたが、2020年にはそれがわずか2人になってしまうという推計もある。

 一方で、人材不足により医療現場はすでに慢性的な疲弊状態にあり、医療における地域格差や医療関係者と患者との情報格差など、今対策しておかないといけない課題が山積している。その一方で、いまだにカルテの約6割は電子化されておらず、いまだに紙で運用されているなど、システム的にも業務的にもレガシーな箇所が多く残る業界である。

 そんな業界の課題をテクノロジーを使って解決するため、2009年に代表取締役社長の瀧口浩平氏によって設立された。同社の最大の特長は、同社の共同代表経営者に医師の経験を持つ豊田剛一郎氏が就いていることだ。豊田氏以外にも、医療従事者としての経歴があるメンバーが複数働いているという。

 メドレーが提供するクラウド診療支援システム「CLNICS」は、「CLINICS予約」「CLINICSオンライン診療」「CLINICSカルテ」の3つのプロダクトで構成される。同システムの最大の特長は予約、診療、決済までシームレスにつながっていること。電子カルテ上から患者と連絡がとれるなど、充実したコミュニケーション機能が提供されているところも差別化のポイントとなっている。

 これらプロダクトの開発に携わっているのが、プロダクトマネジャーであり新規システム基盤の開発を担当している開発部長の田中清氏、CLINICSカルテの開発、およびシステム基盤チームのリーダー的役割を担う中畑耕司氏、CLINICSカルテの機能開発や運用など、開発チームを率いる宍戸展志氏である。

──みなさんはどのようなきっかけでメドレーにジョインされたのでしょうか?

田中 SI、ITコンサル、Web系企業を経て、2016年5月にメドレーに入社しました。転職のきっかけは、40歳を目前にしてもっと生活に根ざしたサービスに携わりたいと思ったからです。メドレーが対象としている医療分野は、レガシーだからこそITで変えられる部分は多い。家族や周囲の人にも役立つサービスだと思い、転職を決めました。

株式会社メドレー 執行役員 開発部長 エンジニア 田中清氏
株式会社メドレー 執行役員 開発部長 エンジニア 田中清氏

中畑 SI、Webベンチャー、ゲーム開発会社を経て、2018年9月にメドレーに入社しました。前職のゲーム会社では、インフラもクライアントの開発も担当。組織が急速に拡大していく中で社内の業務効率化のためのツール開発も担当しました。メドレーに入社したきっかけは、前職に長く務め、外と交流を持ちたいと思ったから。いろんな会社の方と話をする中で、CTOの平山から声をかけてもらいました。平山との話の中で、この会社は医療に真正面から取り組んでいると実感できましたし、これまで培ってきたテクノロジーやスキルがきっと生かせると思い、ジョインしました。

株式会社メドレー 開発部 第二開発グループ エンジニア 中畑耕司氏
株式会社メドレー 開発部 第二開発グループ エンジニア 中畑耕司氏

宍戸 2008年に新卒でサイバーエージェントに入社し、9年間、いくつかのサービスの開発に携わってきました。メドレーに入社したのは2017年10月。サイバーエージェントは好きな会社でしたが、一度、外に出てみて自分の評価を確かめてみたかったのです。そこで大きなプロジェクトが一段落した時、メドレーと出会いました。社会課題を解決する、人の役に立てる分野で働きたいと思っていたときに、声をかけてもらいました。面接に訪れると、みな医療業界をなんとかしたいという思いで働いている。この会社なら医療を変えられそうだと思ったことが、入社の決め手です。

株式会社メドレー 開発部 第二開発グループ エンジニア 宍戸展志氏
株式会社メドレー 開発部 第二開発グループ エンジニア 宍戸展志氏

──メドレーは医療現場におけるどのような課題を解決しているのでしょうか。

田中 医療現場ではさまざまな課題が複雑に絡み合っています。医療現場の効率性を向上するのが「CLINICS」です。患者はネットを通じて24時間いつでも診察の予約ができる。ときにはオンライン診療を受けたり、電子カルテと連携して医療機関からデータを共有してもらったりと、医療機関とスムーズにつながるという新しい医療体験を得られます。

 例えば「CLINICS予約」では、飲食店や美容院などでは一般的なネット予約を病院でも可能にして、患者の診療待ち時間を減らしています。

 「CLINICSオンライン診療」では、患者の居住地域によって医師数が偏ってしまっており、医師が少ない地域での通院や診療待ちに時間がかかる問題の解決を目指しています。特にビデオ通話によるオンライン診療は、「通院の負担が減らせるのだから、病気を放置せず定期受診しましょう」という分かりやすいメッセージングにもなります。実際に南相馬市では、CLINICSを使ったオンライン診療を実施し、地域の医療体制強化に貢献しています。

 さらに「CLINICSカルテ」は、患者のデータをクラウド上に一元管理することで、適切なアクセス管理のもと、病院間をまたいだスムーズな患者情報のやりとりが可能となります。患者側から見ても、自分の医療データや健康状態をいつでも確認できることで、生活習慣病などの継続治療にも貢献できます。過去のデータを元にした詳細な説明を医師から得ることができ、健康に対する意識が変わって、医療リテラシーの向上にもつながっていくと信じています。ひいては、患者やそのご家族にとって「納得のいく医療」を受けることにも繋がると考えています。

 実は診療所・クリニックでの電子カルテの普及率は約40%で、その大半がオンプレミスなのです。オンプレミスだと導入コストもかかりますし、導入後の運用の手間もある。またディザスターリカバリーも困難です。私たちのサービスを使っていただき、利便性を上げてほしいと思っています。

エンジニアと医療従事者が連携し、プロダクトファーストに開発

──CLINICSの開発において、これまでのキャリアで蓄積したどのようなスキル、経験が役に立っていますか。

宍戸 CLINICSはデザイナー1人、ディレクター1人、エンジニア10人で開発しています。エンジニアは3つのチーム分かれ、得意分野によりタスクを分担しています。前職ではサーバーサイド開発が中心でしたが、その時に培った設計論や、どういう状況がボトルネックになり、それをどう改善すればいいかなどのノウハウが役立っています。CLINICSはゲームのように急激にスパイクするトラフィックは発生しませんが、契約医療機関の増加に伴って増えるデータ量やトラフィックなどをモニタリングし、事前に問題が起こりそうなところを先回りしてその改善策を考える。そのようなところにこれまでの経験・スキルが生きていると思います。

中畑 例えば電子カルテやオンライン診療システムに障害が発生すると、患者や医療機関に大きな影響を与えてしまいます。障害が起きにくいシステム作りのためにも、インフラやサーバーサイドの知識が役立っています。また、パフォーマンスチューニングの知識は、どんなシステムでもユーザー体験の向上に役立ちます。他にはWebサービス開発や運用で培ったスピード感も役立っています。

田中 技術的なことはもちろんですが、SI時代で身につけた、クライアントの要件をうまく聞き出す力や業務設計、ドメイン知識の短期習得、プロジェクトの管理や進行などのスキルが生きていると感じます。

──逆にメドレーに入ってから新しく学んだことや身についたことはなんでしょうか。

田中 何のためにそのプロダクトや機能を作るのかを意識する姿勢です。メドレーでは1機能であっても、エンジニアと医療従事者が議論をしながら開発を進めます。そのような開発方法はメドレーに入って新たに学んだことと言えるでしょう。

宍戸 メドレーの開発部はインフラ、サーバサイドなど担当を分けすぎないのが特色なので、サーバーサイドに加え、フロントエンドまで携わるなど技術の幅が拡がりました。メドレーでは顧客の声をそのままプロダクトに実装するのではなく、背景を深掘りし、真の課題を見極めていくことが求められます。そういった、開発の進め方の経験値は高められたと思います。

エンジニア×医療の未来は?

──医療分野は制度が複雑で、習得するのはなかなか難しいと思いますが、ドメインの知識をどのようにキャッチアップされましたか。

中畑 医療事務や医療保険制度などの本を読んだり、医療情報システムに関わる資料を読んだりしました。また、開発部で行っているタスクフォースと呼ばれる勉強会や隔週で実施されるテックランチ、医療従事者と話をする中で医療に関する知識を身につけていきました。

田中 特に大事にしているのが医師をはじめとした医療従事者と議論をすることです。実際の現場でどのような課題があるのか、現在のプロダクトではどこが解決できていないのかをイメージするためです。私もわからないことを直接医療従事者に聞き、インプットを深めていきました。

──これまでのエンジニアとしてのスキルと医療というドメインの知識が掛け合わされた今、自分の優位性や市場価値などをどのように思いますか。

宍戸 メドレーで培った顧客の課題を見極め、それを機能に落とし込んで行くという開発の仕方は汎用的なスキルだと考えています。そのスキルについては向上させることができたと感じているので、以前と比べると市場価値を高められたと言ってよいのかなと思います。

田中 医療課題の解決には長期視点が必要となり、市場価値についても同じく長期で考える必要があると思います。市場価値を高めるには、宍戸が言ったように課題を解決するという思考力、そのための課題自体を見極める力など、どの業界でも生かせる汎用的なスキルを高めることを大切にしてほしいと思います。

課題解決のためにテクノロジーを活用していきたい

──メドレーのようなX-Tech分野において、エンジニアのどのようなマインドが生きていくでしょうか?

宍戸 課題解決のために技術を使える人、課題解決思考のある人は活躍できると思います。新しい技術にチャレンジすることも大事ですが、課題解決するまでがゴール。その技術を使い、何ができるか考えられることが重要なのではないかと思います。

中畑 課題を見極めつつ、関係者とうまくやり取りできる人が活躍できるのではないでしょうか。もちろんテクノロジーを駆使して、課題解決もしていきたい。医療の未来を創っていくには想像力が必要です。そのような取り組みに楽しいという気持ちが抱ける人が向いていると思います。

田中 エンジニアなので、技術が好きであることは大前提ですが、その技術は何を為すための技術かということを理解してほしいと思います。医療分野はレガシーと言われますが、新しい技術によって抱えている課題が解決できることもあります。新しい技術を常にキャッチアップすることが面白いと思える人。いきなり社会課題と大きく考えなくても、まずは「技術を使って家族や友人の役に立つプロダクトをつくりたい」という思いでも十分にこの業界で活躍できると思います。

メドレーではエンジニアを募集しています

 メドレーでは、医療ヘルスケアの未来をテクノロジーで作っていきたいエンジニアを募集しています。興味のある方はぜひ以下のページから、ご応募ください。

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著者プロフィール

  • 中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

     大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

  • 篠部 雅貴(シノベ マサタカ)

     フリーカメラマン 1975年生まれ。  学生時代、大学を休学しオーストラリアをバイクで放浪。旅の途中で撮影の面白さに惹かれ写真の道へ。  卒業後、都内の商業スタジオにカメラマンとして14年間勤務。2014年に独立し、シノベ写真事務所を設立。雑誌・広告・WEBなど、ポートレートをメインに、料理や...

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