開発者 の「仕様書に書いてない!」に、テクニカルディレクターは何と答える?
<ROUND3:VS アートディレクター> 「もっと、『シュッ』とした動きで」
「何かいいものをつくりたいときに、言語化できないこともある。『もっとシュッとした動きで』みたいな言い方とか、体感的に気持ちがいいもの、グッとくるもの、といった表現も広告業界では、よく使われているはず。そうしたエンジニアリングの力でクリエイティブに命を吹き込んでもらいたいときの議論をする際に、気をつけていることはあるか?」と入江氏は問いかけた。
「たとえば、使いやすいUIを目指したときの“シュッ”なのか、ブランドの表現としての“シュッ”なのか、いろいろなケースが考えられる。 “シュッ”の多様性を理解しつつ、どの“シュッ”なのかを考えていくのがひとつ。あとは、いろいろな“シュッ”の事例を探してきて、『この“シュッ”ですか?』と確認しながら共通認識をつくっていく。あるいはms単位でスピードを調整できるようなツールをつくって、『ちょうどいい“シュッ”のところにしといてください』と戻してしまうこともある。テクニカルディレクターには、文学性と開発脳を両輪で回していくおもしろさとつらさがあると感じている」(清水氏)
<ROUND4:VS 開発者> 「そんなの仕様に書いてないです……」
「仕様書に書いていないからできない」というエンジニアがいたときに、テクニカルディレクターはどう対処しているのか。田中氏は「仕様書に書いてなくてすみませんが……」とまずは真摯に謝罪から入るなど、「なんとか前向きにいいものをつくろうと思ってもらえるよう、コミュニケーションで解決しているところもある」と明かす。
これに対し清水氏は、「たしかに人間関係は大事。『無茶振りしてくることはあっても、最後は守ってくれる人だ』とエンジニアから信頼を獲得しておくのも、テクニカルディレクターの大事な仕事だと思う。そもそも私はエンジニア出身だし、今でもプログラムを書くことがあるので、どうすればエンジニアが納得して動きたくなるのか、というポイントはわかるから」と語る。
<FINAL ROUND:VS クリエイティブディレクター> 「そのへんはAIでどうにかしてよ!」
広告会社のみならず、部署によって技術全般に対する解像度にばらつきがあることは、よくある。なんでもかんでもAIでどうにかできると思っている人たちに対して、テクニカルディレクターはどうアプローチするのか。
「AIは学習データがないとうまく活用ができないということを知らない場合が多いので、『こういうアルゴリズムを使って、こういうモデルをつくればできるかな? そのためにはこういうデータが必要だけど……』」と、最終的なゴールに辿り着くまでのプロセスを細分化して伝えるのがひとつの方法としてあるのではないか」と語る清水氏。加えて、テクニカルディレクターはさまざまな方向から飛んでくる球を打ち返すため、広く浅く(願わくば深く)対応力を育てておく必要があるが、それこそがこの仕事の大変だけど楽しいところでもあると述べた。
「いろいろ大変なことがあって“格闘”という表現をしたが、ベースは敵ではなく仲間。日々苦労しながらも、みんなでがんばっている」と語り、入江氏はセッションを締め括った。
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