PMMの仕事とは
Product Marketing Managerの頭文字を取ったPMM。米国で最近登場した新しい役職であるという。「私自身エンジニアだった頃は、マーケティングは非常に縁遠いものだと感じていた。必要なのは分かるけれど、どこかの誰かがうまいことやってくれているだろうと。自分に関係あるとは、まったく思っていなかった」と村上氏は振り返る。
しかし、実際にPMMになってみると、特にソフトウェア業界では、エンジニアに適性がある仕事ではないかということがよく分かったという。
PMMの仕事ができたのは、PMの仕事があまりにも多すぎたからだとして、村上氏は下記のプロダクトマネジメントトライアングルを提示した。「これはDan Schmidt氏が提唱したもので、PMの仕事を表している。『PMの仕事は、製品を軸として「お客さま・開発者・ビジネス」の要素を必ずはらんだ形で表出してくる』と彼は言っており、まさにそのとおりだと思う」。
Dan氏がざっと挙げただけでこれだけの仕事がある。もちろん他にもある。「これらすべてが健全に機能しなければプロダクトマネジメントはうまくいかない」というDan氏の指摘に異論はないが、あまりにも仕事が多すぎやしないだろうか。そこでPMの仕事の中から一部を切り離し、PMMの仕事にしてはどうかということで、PMMの仕事が生まれた。具体的には、お客さまとビジネスに関する業務(下図、黄色部分)だ。
そして開発者とビジネスに関わる業務(下図、緑色部分)は、PMと協調して仕事を進めていくとされている。例えば、PMが考えたロードマップをもとに、PMMがビジネスの観点から「ローンチ予定日の辺りに大きなITイベントがあるので、そこで発表するのはどうか」といった提案をして準備を進めるといった具合だ。実際、PMとPMMがどう仕事を分担するかは、企業によって異なる。
グレープシティのPMMが期待されている役割について、「『市場の特定→製品訴求→お客さまの創出→商談』のサイクルを回し続けることだ」と村上氏は語る。自社の製品を求めている顧客がどこにいるのかを特定し、そこに対して訴求を行う。顧客に情報が届き検討が進んだら、営業に引き渡して商談へとつなげる。そこで顧客からフィードバックを得たら、それを材料として再び市場の特定へと入っていく。
中でも、既存製品を長く取り扱っているビジネスでは、製品訴求がメインの仕事になってくる。つまり市場(顧客)に対して製品を「語ること」だ。語ると言っても、口頭で説明する限りではない。「認知→興味・関心→検討→購入」へと至るマーケティングファネルにおいて、例えば認知段階の顧客に対して「製品Webサイトの作成」や「イベント出展」などを、興味・関心段階の顧客に対しては「ブログ」や「セミナー」など、検討段階の顧客に対しては「事例」や「ホワイトペーパー」などを用意する中で“語って”いく。
このようにさまざまな形で製品を語るには、製品に精通していることが条件となる。幅広い製品知識を持っていることはもちろん、製品の使用方法や活用方法も熟知していなければならないし、どんな製品にも必ずある欠点を補えるよう、ポジティブな変換ができる力も求められる。「特に、ソフトウェアビジネスのような製品が複雑なケースでは、製品を“語れる”エキスパートを育成することは困難だ」と語る村上氏。だからこそエンジニアの経験が活かされるのである。