スタートアップ創業は失敗しても「挑戦した」というキャリアになる
2社のピッチに続き、小原氏、川崎氏に加え、モデレーターの東大IPCの小澤彩織氏も加わってのトークセッションが行われた。
まずブリングアウトのCTOを務める小原正大氏は、もとはリクルートでプロダクトマネージャーとして複数の新規事業をリード。その後も「手を動かしながら」新規事業開発に携わってきたという「事業立ち上げにキャリアを全振りした」という経歴の持ち主だ。
そして、イマクリエイトのCTOである川崎仁史氏は、NTT研究所で、ITを活用した人の意欲向上支援に関する研究開発に従事。現在は現職に加え、東京大学工学系研究科の社会人博士として、XRによる能力向上支援に関する研究開発に取り組んでいる。
小澤氏の「2人とも、大手企業からスタートアップ創業という経歴だが、周囲はどのような反応だったのか」という問いかけに、小原氏は「リクルートという入社3年目にして半分くらいが起業しているという環境だったので、むしろ元同僚などに『いつ辞めるのか』と背中を押される形だった」と語る。もともと学生の頃からベンチャー創業を手伝うなど起業志向だったが、福岡でサラリーマン家庭に育ったこともあり、まずは大手企業に入ることで両親に安心してもらいたかったという。
さらに、「決して打算的な意図はないが、たとえ失敗したとしても挑戦した結果がキャリアとして残る。そうした人を採用する傾向にもあり、今後、キャリアが詰むということはないと考えている」と語った。
川崎氏も、「NTT在職時に開発した「VRけん玉」への周囲の反応がよく、反対や心配の声はほとんどなかった」と語る。実母および配偶者の両親は懸念する様子が見られたものの、「東京IPCの投資支援に加え、ゴルフのトレーニングシステムなど具体的な企画が進むことで、不安感を払拭できた。個人的には研究成果をもとに突っ走った感はあるが、周囲の応援も感じており、キャリアパスとしても心配はしていない」と強調した。
スタートアップ創業で失敗すると、自身のキャリアに傷がつくと考え、不安に感じる人がいるかもしれない。しかし、実際には2人とも、スタートアップ創業が挑戦したことに対するキャリアとして価値があるものと認識しているという。
なお、家族の理解については、「応援してもらえるよう情熱を示すこと」(川崎氏)、「話し合いと家族の生活を大切にすること」(小原氏)などでしっかりコンセンサスを取ることが重要になるようだ。