SPACEフレームワークの導入で組織にもたらされた変化
overflowでは、SPACEフレームワークの5つのカテゴリのうち、3つのカテゴリを重要指標として運用している。
1つめは「Satisfaction and well being」とし、満足度・充実度を測定する。2つめは「Communication and collaboration」とし、メンバー間のコミュニケーションやコラボレーション具合を測っている。3つめの「Activity」ではこれまで同様Four Keysを指標として見ている。
「この3つを選択した理由は、すでに私たちの組織は拡大し、がむしゃらに作るフェーズではなくなっているからです。提供している機能も増えて、議論しながら磨き上げていくことが重要だという判断から、満足度や充実度、コミュニケーションとコラボレーションというカテゴリを選びました。同時に、安定的に機能をリリースしていくことも変わらず重要だとしてFour KeysやPR数も測定しています」
具体的な測定方法として、次の4つの調査を実施しているという。
1つめはコンディションサーベイ。これは、業務難易度・タスク量・会社やプロダクトを勧められるかといったアンケートに回答してもらうものだ。個人が特定されるような内容の開示はせず、全社の平均値や全体スコアを元にした影響を観測し、定量指標にプロットしている。
2つめは開発者アンケ―ト。日々の業務におけるトイルやペイン、オンボーディングのコスト、会社としてのツールのサポート状況などをアンケートで収集する。そしてSREタスクとして棚卸して順次対応することによって、トイルとペインの減少状況を確認していく。
3つめは、コミュニケーション相関関係図により組織の状態を見ていくこと。Slack上のやり取りを可視化できるようにし、誰と誰のつながりが強いのか、つながりが薄いメンバーがいないかなどを把握するという。こうした情報を、入社したばかりのメンバーのフォローや、副業で参画しているメンバーのエンゲージメントの高さを確認し、転職の声掛けなどにも活用している。
さらに4つめとして、従来のFour KeysとGitHubでのアクションなども計測している。
では、SPACEフレームワークに基づいた指標を測定するようになり、組織はどのように変化したのだろうか。
一つは属人的に見ていた相関の発見ができたこと。たとえば、コラボレーション力・巻き込み力が高い人ほどインパクトのあるアウトプットを生み出しやすいが、リードタイムが長い傾向が見られるという。また、コミュニケーションをフォローすることで満足度が向上し、それが行動数の増加につながり、大きな成果を生み出していると考えられる。トイル・ペインの解消という点では、アンケートで上がった項目に対応していった結果、数カ月後にFour Keysの向上に繋がるといった弱い相関が見えてきたといった具合だ。
もう一つは、チームや個人に則したデータに基づく組織改善ができたこと。従来、1on1やアンケートを基に組織をフォローしてきたのだが、そのフォローした結果が定量的にどうなったのか特に気にしていなかった。それが、現在は測定したデータに基づいて効果を把握しやすくなっているというのだ。
こうした事柄の相関発見は、大谷氏や他のマネージャがこれまでの経験から属人的に予測していたが、定性的な調査や数値を継続的に把握することで裏付けしやすくなってきたと、その効果を強調した。
最後に大谷氏はセッションの内容を次のようにまとめた。
「開発生産性を定量的に測定するのは大切なことですが、組織的な副作用もあります。そのため、Well-beingを意識した状況把握も組み合わせて多面的に把握することが大事です。SPACEフレームワークは柔軟な運用が可能なので、チームや組織で何が重要なのか自分たちのフェーズに合わせて決めるのが良い使い方だと思います」
なお、セッション内で紹介したいくつかの機能を、overflowが提供する「Offers MGR(オファーズマネージャー)」で提供できるようオープンβ版の事前登録を行っていると伝え、セッションを終了した。
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