マーケティングDXセンター:それぞれの専門領域で新たな価値創造
続いて、麻生氏が所属するマーケティングDXセンターは4つの部署に分かれている。それぞれ博報堂DYグループ内のツール開発、業界別SaaSプロダクト開発、最先端テクノロジー領域のプロトタイプ開発、マーケやITコンサル支援などに取り組んでいる。生活者の課題や、その背景にある社会課題などを把握し「生活者インターフェース市場」として、それぞれ新たな価値創造や提供に向けて開発を進めている。組織の強みとして、麻生氏は事業貢献に向けた面の広さ、100%内製を可能とするサービス開発力、博報堂DYグループが持つマーケティング領域の知見を挙げる。
麻生氏が所属するのはプロデュース2部で、社外向けサービスとして業界別SaaSプロダクトを開発している。主にモビリティ、ヘルスケア、自治体、小売り業など、博報堂のクライアントの業種領域に、博報堂DYグループ独自のテクノロジーを掛け合わせて新しいSaaSサービス「XT.H(クロステックエイチ)」を開発、構築している。サービスはWebアプリケーション、スマホアプリ、LINEミニアプリ、デスクトップアプリなどで提供され、これらのアプリケーション開発だけではなくサービス横断の認証基盤、ライブラリ開発、インフラ構築、保守運用まですべて内製で行っているのが特徴だ。
XT.Hのプロダクトをいくつか挙げよう。モビリティ領域では「ノッカル」、これはいわば住民同士が支え合うMaaSだ。郊外では自動車がないと移動が難しくなる。そうした地域の移動課題を解決するためにマイカー乗り合い公共交通サービスとして実証実験を行い、2021年より富山県朝日町にて本格サービスインした。国土交通省の事業者協力型自家用有償旅客運送の初事例となった。麻生氏はこれに長いこと取り組んできたためか、この説明には力が入る。
もう1つ、ヘルスケア領域では「ロコモ年齢」がある。これは日本整形外科学会と博報堂DYグループが開発したロコモ年齢(移動機能の健康度、膝年齢とも言える)測定ツールになる。自分の足腰の強度を把握し、高齢になっても自力で歩けるようにしようという啓発活動の一環となっている。
他にもヘルスケア領域では企業向けに健康改善度可視化サービス、メンタル・フィジカルのリスク度判定サービス、自治体DX領域ではポイントソリューション、住民とボランティアのマッチングサービスなどを「絶賛開発中」と麻生氏は言う。
こちらもチームは30歳前後の開発エンジニア、デザイナー、QA、プロダクト企画メンバーで構成され、9割以上が女性となっている。