自分の価値観にあった環境を見つけるには
そんな古山氏は、生きづらさを払拭し「ふつーに楽しくエンジニアライフを送るためのヒント」として、3つのポイントを挙げた。
Point1:評価を見極めよう
古山氏は、外資系企業に転職する前のオラオラ期やモザイク期では、「こんなに頑張ってるのに他の同期より評価されてないのは女性だからでは」といった不満を抱くことがあった。逆に、評価をされて管理職に推されると、「女性だから管理職の人数がほしいのでは」「失敗させて恥かかせようとしているのでは」などと疑心暗鬼になってしまうこともあったという。
その不安や不満は、「自分が1人だけで頑張ろうとする気持ちが原因ではないか」と古山氏は問いかける。
古山氏は、周りからの評価を気にして正当に自身を評価できず、自分の気持ちと周りを分離できないために悪い方に考えがちな「Impostor Syndrome(詐欺師症候群)」を紹介した。環境によるところが大きく、とりわけ日本の女性に多く見られる現象とされている。古山氏の場合、「失敗を恐れるがあまりに必要以上に仕事に熱中し、他者にも同じ努力を求めるようになった」と振り返る。
ここから脱却するには、自分自身を否定せず、事実に基づいて評価を見極めること、さらにロールモデルや「こうあるべき」という固定概念にこだわらないことが重要になる。
古山氏のおすすめは、年に1回、客観的に職務履歴書のアップデートをすること。1年の成果の棚卸しができ、転職するしないに関わらず、自分がやってきたことを客観的に見て、エージェントなど他者に説明できるようになる。すると欠けている部分ややりたいことなどが浮かんでくるというわけだ。
Point2:楽しめる領域を見極めよう
古山氏は続いて、「楽しめる領域を見極めよう」というポイントを示した。「楽しめる領域」を見つけるには、マーケティング理論の1つである「イノベーター理論」で考えるのがおすすめだという。新しい製品やサービスを市場に投入する際に、「イノベーター」「アーリーアダプター」など5つの段階から普及率などを把握するために用いられるものであり、そこに興味があるテクノロジーや働いている会社、自分自身を当てはめてみようというわけだ。
つまり、イノベーターやアーリーアダプターは、使う人が少なく「目新しい領域」であり、先行者メリットが得られる。キャズムと呼ばれるアーリーアダプターとアーリーマジョリティの境を超えて、普及期に入ればボリュームゾーンとなる。さらにレイトマジョリティならば安定的なテクノロジーとして成熟期であり、ラガードともなるとトレンドとは別に「極めたい」と考える職人気質の人が好む領域といえるだろう。
古山氏の場合、「イノベーターやアーリーアダプターが萌えるし、燃える」と語った。女性のエンジニアが少ない時期にエンジニアになったことも、設立8年目で急成長中のSnykも、古山氏のそうした気質による選択だ。
そして、「今も昔もつらいセキュリティ対策」を変え、快適なDevSecOpsの実現をサポートするSnykの新しいサービスに、自分の強みを発揮できると感じているという。
スタートアップでありイノベーターといいつつも、Snykはユーザー数が急増しており、社員数もグローバルで約1200人ほど、さらに女性の割合が高く、社員も役職者も2023年で男性以外が35%を越えている。社内の女性およびアライが関連するトピックスについて情報交換する場やメンターシップが用意されるなど、制度や雰囲気ともに「女性だから」と特別視されることなく働けることも、古山氏の快適さにつながっていると言えるだろう。
古山氏は「自分が楽しめる領域を選ぶことと、自分の価値観や働き方などを理解してもらえる環境を選ぶこと。その両者が合わさると、楽しみながら働くことの厚みも増すのではないか」と改めて強調し、「グローバルな会社で働く上での特有の問題は、時差と言葉の問題くらいで、意外と少ない。所属するチームメンバーは世界中に散らばり、時差を考えながらミーティングや1on1も行うが、さまざまな働き方がかなう環境だ。日本でも地方からフルリモートで働けるようにもなっている」と語った。