転職活動を重ねて見えてきた印象的な指摘
世界的に不景気に陥ったリーマンショックのころ、システム開発会社でも仕事が減り、人員削減でどんどん人が現場から「剥がされていく」のを小倉氏は目撃していた。当時アサインされていたのは長期プロジェクトで「これを終えたら10〜15年過ぎている。その後、自分はどうなるだろう」と不安が募り、転職活動を開始した。面接を重ねていく中で、印象的な指摘があったという。
1点目は「なぜ30歳を過ぎて転職活動するのか。普通は20代のうちに転職するものだ」という指摘だ。この発言に小倉氏は「確かに。20代で自分のキャリアプランを立てて、若いうちから転職なり行動していくのがいいのだろう」と頷きつつも、「30歳を過ぎて転職してうまくいくケースも多々ある」とも言う。
2点目は「君の尖ったものは何か」という指摘だ。言い換えれば専門性や得意分野であり、これをしっかり言語化しておく必要があるということだ。「これなら誰にも負けません」というものを、日々の仕事や生活のなかから見いだし、伸ばしていくことはとても有益だ。
そうした折、損害保険会社に勤めている知人からの誘いを受け、転職する運びとなった。まずは社内向け業務支援システム開発から着手し、次第に仕事ぶりが認められ、主要業務となる自動車保険基幹システムの保守やプロジェクト運営を任されるようになった。
その後も新商品となる火災保険や団体保険などのシステム導入プロジェクトで、パッケージやベンダーの選定、予算組みなど大きな仕事を任されるなど仕事は発展していった。さらに経営企画で使うデータ分析基盤においても、Tableau(BIツール)導入やデータウェアハウス構築にも携わった。
2社目で小倉氏は「大きな会社に入社して気づいたのは、何を決めるにも時間がかかるということです。特に事前の根回しが必須。伝える内容も大事ですが、『この人が言うなら間違いないだろう』と人を見られることも多いので、人を磨くことも大事」だという。また「部門横断のプロジェクトでは他部署に仲間がいると心強い。仲間を作るには、普段の仕事で地道に成果をあげていくことが大事」と小倉氏は強調する。
これはどの会社でも通じることではないだろうか。何かプロダクトを開発する時、開発部門だけではなくビジネス部門や他部門との連携が必要になるため、社内における人脈を広げていくことは大事だ。
時には社外の人脈も重要になる。小倉氏は「他業界でも同じようなものですが、保険業界は内部のつながりが強く、他保険会社の方と情報交換をすることもあります。業界内の転職も多く、保険会社から別の保険会社だけではなく、保険会社のシステム開発をしていた人が保険会社に転職することもあります。そのため日々の業務で出会う人たちと、なるべく良好な関係を築くことが将来にも役立ちます」とアドバイスする。