採用者の立場を想像して、自分の夢をかなえる──外資系への転職とプログラマー転向を実現した思考法とは?
次に牛尾氏は、三流プログラマーという自己分析にくじけず、外資系に挑戦したエピソードを語った。マイクロソフトへの転職のポイントは、採用担当者が何を考えているかを観察して理解することだったという。
まず牛尾氏は、外資系企業というと「英語がペラペラじゃないといけないのでは?」と考える人が多いことを指摘。しかし、実際の現場では、英語ができず困っているケースも多いと伝えた。そのため外資系企業が日本人を採用するとき、技術力が10点満点中10点なら、英語力が3~4点でも、それだけでレア人材であり十分可能性があると説明した。
また牛尾氏は、英語の学習は効率的にできる方法があるとし、英単語の発音をきっちり行う「英語の個別の発音練習」と、会話を聞きながら自分の声に出す「シャドーイング」の2つの方法を紹介した。牛尾氏は、「しゃべりは練習したら上手くなるんです。でも大抵の人は練習しないから、上手くならない。やればできます」と強調した。
次に、牛尾氏は採用担当者の考え方に着目することの重要性について述べた。そもそも採用担当者は、募集する部署やグループの要望にマッチした経験・知識を有する人材を探そうとする。ならば、そのグループの業務や利用しているテクノロジーから、望まれる経験や知識を想像し、自分の経験と重なる部分があるか、無ければ今から経験を積むかなど、望まれる人材に近づく戦略が必要と考えられる。
実際、牛尾氏がマイクロソフトに応募したとき、エバンジェリストという技術広報の日本担当を目指していた。米・仏・独という外国人の面接官が並ぶ前で、牛尾氏は「日本におけるシステムの市場洞察」という自作プレゼンテーションを披露。マーケットやデベロッパーの状況を中心に、アジャイル開発はまだ導入が完璧ではなくウォーターフォール型も多いといった情報などを紹介したところ、採用担当者はびっくりして聞き入ったという。
牛尾氏は「海外出身の採用担当者からしたら、日本の状況はまったくわからないはず。その状況を、わかりやすく伝えられる人材がいればたぶん重宝がられる。そう考えてプレゼンを実施しました」と語った。この作戦は見事成功し、牛尾氏は日本マイクロソフトに入社となる。
次に牛尾氏がエバンジェリストからプログラマーに社内転職したときは、プログラマーが採用担当になっているだろうと想定し、彼らから見て馴染みがある存在を目指した。具体的には、チームのGitHubプロジェクトにコントリビュートして機能を追加したり、プルリクエストを送ったり、また関係者が日本に来たときはアテンドするなど、プログラマーとして目立つ活動を率先して実施した。
この結果、マイクロソフトのプログラマーから「牛尾は知ってる奴、いろいろ活発に活動する奴」と認識されるようになる。GitHubにコントリビュートするぐらいだから、ある程度の知識はあるだろう、プログラミングに興味や情熱があるだろうという想像もプラスに働いた。「GitHubの活動から、私のことを知ってもらえるじゃないですか。採用担当のプログラマーから見てよく知っている人材は安心ですし、そのような状況を作れば最後まで残りやすくなる。こうした戦略で他の応募者との差別化を図りました」と語った。こちらも見事成功し、牛尾氏は念願だったプログラマーになった。
なお、日本の場合はコミュニティへの参加が同様の効果を生む可能性があるという。特にコミュニティ運営側になると、優秀でポジティブな人と知り合うことができ、学びの機会も多い。さらにイベントの登壇機会を得ることで、認知を高められる。