目指すは内製開発力の強化! GovTech東京の挑戦
GovTech東京の長期的な目標は、2040年に向けて、「東京・日本での生活がデジタルの力を通じて便利で快適になっている状態」を実現することだ。そのための最初のステップとして、GovTech東京は、2027年に向けた中期経営計画を策定した。
GovTech東京の中期経営計画では、3つの目標を掲げている。1つ目はサービス品質の変革だ。「ダメなサービスを撲滅し、ダメなサービスを放置しない」ために、行政デジタルサービスにプロダクト開発の考え方を取り入れ、ユーザーのフィードバックを受けながら継続的に改善することを目指す。2つ目は、内製開発力の獲得だ。外注を全廃するわけではなく、内製と外注を組み合わせたハイブリッド型に転換し、自ら責任を持ってサービス運営をする組織への進化を目指す。3つ目は、人材採用の拡充や事業施策などによる、持続的な経営基盤の確立だ。

これらの目標に沿って、GovTech東京では、すでに内製開発力の獲得に向け取り組んでいる。
まず井原氏は、「2050年代の東京」に向けた東京都の戦略策定のための意見募集において、ブロードリスニングという手法を活用したプロジェクトの事例を紹介した。これは、SNSや動画サイトなどのさまざまなプラットフォームから都民の声を収集し、AIを活用してクラスタリングすることで、意見を可視化する試みだ。AIエンジニアの安野貴博氏の協力のもと、GovTech東京でOSSをベースに内製開発したところ、ブロードリスニングの仕組みを、わずか3日で実装できたという。「外注していたら膨大な時間がかかるところ、内製開発だから短期間で実現できた。中長期的にはコスト削減にもつながる」と、井原氏は振り返る。
次に井原氏が紹介したのは、018サポートのオンライン申請システムの改善事例だ。018サポートとは、18歳までの子どもがいる家庭を対象に、東京都から毎月5,000円の補助を受けられる制度のことだ。初回リリース時には、手続きを1時間以内に完了できた人はわずか7%と、使いにくいものだったという。そこで、デジタル庁や東京都、そしてGovTech東京が連携し改善を続けた結果、完了率は70%まで向上した。このように、自らシステムを改善する力を持つことで、より良いサービスをより迅速に提供できるようになると、井原氏は言う。その他GovTech東京では、保育園探しから入園までの手続がオンラインで完結する「保活ワンストップサービス」など、様々な行政デジタルサービスで内製と外注を組みわせたハイブリッド型の開発にも着手している。
さらに、東京都の各局や都内の区市町村がAIサービスを共通に仕組みの中で展開できるよう、生成AIプラットフォームの構築に取り組んでいる。具体的には、Azure上にDifyやRAGの環境を構築し、生成AIアプリの開発や、APIによるシステム連携ができるようにする。こちらも、将来的には東京都だけでなく、全国の自治体が低コストで利用できることを目指しているという。

「現在、日本には約1,700の自治体がある。その中には予算や人材が不足している自治体も多く存在する。東京都と連携しGovTech東京が内製開発したシステムを、他の自治体が低コストで活用できる環境を実現したい」(井原氏)