ASP.NETとASP.NET MVCの比較
前述しましたが、ASP.NETとASP.NET MVCは仕組みが異なるので、できること/できないことが明確に分かれています。まずは、概要レベルでの比較です。
ASP.NET | ASP.NET MVC | |
MVCでのサイト構築 | 不可能 | 可能 |
URLルーティング | 対応したWebフォームが必要 | ルーティングルールによりシンプルなルーティングが可能 |
イベントドリブン | 利用する | 利用しない |
単体テスト | 工夫が必要 | 容易に設定可能 |
MVCでのサイト構築がWebFormでできなかった原因の一つとして、一つのWebFormに対してビジネスロジックファイルが最低一つは必要だったことが挙げられます。コードビハインドを利用していなくとも、WebForm内に処理を書くことがほとんどです。また、それに伴いURLルーティングもリライトUrlMappings
プロパティを利用すれば可能でしたが、簡単にシンプルなURLを実装できませんでした。
続いて、実装レベルでの比較です。
ASP.NET | ASP.NET MVC | |
ポストバック | 利用する | 利用しない |
ViewState | 利用する | 利用しない |
アプリケーション形式 | Webサイト/Webアプリケーション | Webアプリケーションのみ |
ツールボックス | 多用する | 現時点ではほぼ利用しない |
コードビハインド | 多用する | ほぼ利用しない |
JavaScriptライブラリ | 利用可能 | 利用可能 |
各ASP.NETの機能 | 利用可能 | 利用可能 |
埋め込みコード | 利用可能 | 多用する |
いくつかポイントを抜粋します。
MVCアプリケーションでは、ポストバック・ViewStateを原則利用しません。ユーザーからのリクエストはすべて「Controller」ディレクトリ内のController
クラスの処理の結果により、表示すべきページが決まります。つまり、ポストの結果、同一のページに戻るポストバックの動作とは相反するサイト構築がMVCには求められます。
現時点では、ツールボックスはほぼ利用しません。理由はポストバック・ViewStateを利用するサーバーコントロールを利用しないからです。原則ViewPageでは、VS 2008のインテリセンスを利用しつつ、手書きでHTMLタグを記述していく必要があります(後述するHtmlHelper
クラスという手助けもあります)。
一見手間に感じますが、サーバーコントロールを利用しないことにより、ASP.NET MVCアプリケーションのHTMLソースはすっきりとした表示になります。つまり、デザイナとの連携を取りやすいというメリットもあります。
埋め込みコードは「<% %>」で括ることでVB/C#のコードをHTMLソース上で実行できるようになります。ASP.NET MVCではModelで受け取ったデータをViewPageのHTMLソース上で埋め込みコードを利用し表示することになります。この部分はプログラマの力が必要なので、デザイナと連携を取りながら、データ表示の部分の処理を埋め込むことになるでしょう。
各ASP.NETの機能は、今までのASP.NETアプリケーション構築の中で利用してきた機能のほとんどを指します。認証・メンバシップとロール、プロファイル、データキャッシュ、セッションなど。この部分はASP.NET MVCの上でも問題なく動作します。
ASP.NET MVCのリクエストフロー
現時点でASP.NET MVCのソースは公開されていますが、あくまで一部のみの公開で詳細な部分は依然として隠ぺい化されています。また、まだ正式リリースされておらず、ドキュメントも整備されていない状況なので、公開されている範囲でのASP.NET MVCのアーキテクチャについて簡単に解説します(図3)。
URL Requestがあると、最初にUrlRoutingModule
オブジェクトがリクエストを受け取ります。
続いて、HTTP handlerを継承したMvcHandler
がリクエストを解析し、Controller
クラス、とaction
メソッドを特定します。そしてインスタンスを生成し、Actionを呼びます。
MVCフレームワークはControllerのsuffix部分をURLルーティングで設定されたControllerカテゴリ部分に加えます。actionカテゴリは呼ばれるメソッド名です。action
メソッド内ではViewを作成するViewPage
を指定して戻り値を渡します。この時、Controller
クラスは指定されたページのインスタンスを生成し、それを呼び出します。
通常のASP.NETのリクエストフローとは大きく異なる点をしっかりと理解する必要があります。