クライアント側実装 DataGridコントロールの表示カスタマイズ
さて、基本的なXMLファイルのバインディングは実現できました。しかし、自動で表を作成しているため、柔軟には運用できません。これだけではDataGridの機能を実感できないので、表示をカスタマイズしてみましょう。
DataGridで列の自動生成を行わず、各列を手動で挿入するようにします。手動挿入の場合、各列でバインドするプロパティは個別に設定できます。顧客リストのID、Name、Work、Ref要素はそのままテキスト表示し、Check要素はチェックボックスで表示しましょう。また、今回はテンプレートを使ったカスタマイズを試したいので、Mail要素はハイパーリンクを記述するためのHyperlinkButtonコントロールを使って表示させてみましょう。
Expression BlendでPage.xamlを編集し、DataGridを選択します。AutoGenerateColumns
プロパティをFalseに設定します。これで表の自動生成が行われなくなり、バインドされたデータが自動で表示されることがなくなります。
続いて、列を手動で挿入しましょう。DataGridに手動で列を挿入するにはDataGridColumn
クラスを使用します。Expression BlendのDataGridのプロパティで[Columns(コレクション)]項目で[...]をクリックします。
このダイアログからDataGridに手動で列を挿入することができます。
画面にもあるように[別のアイテムを追加]をクリックし[オブジェクトの選択]ウィンドウで[システムアセンブリの表示]にチェックを入れて追加できるアイテムを参照します。
列挙されている中の、DataGridTextColumnはテキスト表示する列を、DataGridCheckBoxColumnはチェックボックス表示する列を定義するためのクラスです。今回はテキスト表示するID、Name、Work、Ref各要素について、それぞれDataGridTextColumnを挿入します。チェックボックス表示するCheck要素については、DataGridCheckBoxColumnを挿入します。
また、前述の通りMail要素はハイパーリンクとして表示させるため、DataGridTemplateColumn
クラスを使います。このクラスにより、さまざまなコントロールをDataGrid上で扱うことが可能になります。ここでDataGridTemplateColumnを挿入しますが、実際にハイパーリンクを表示させる詳細については後述します。各アイテムは下に表示された上下ボタンを使って表示させる順番を変更することができます。
続いて各アイテムのプロパティを設定しましょう。HeaderはDataGridの先頭行に表示されるヘッダー文字列を指定するプロパティです。DataGridTextColumnにはフォントサイズを設定します。
ではここまでで変更を保存してVisual Studioに戻りましょう。
さらにVisual Studio側のXAMLペインでDataGridに変更を加えていきます。
<data:DataGrid Margin="48,48,248,192" Grid.Row="1" x:Name="list1" AutoGenerateColumns="False" IsReadOnly="False" IsEnabled="True" Grid.ColumnSpan="1" Grid.Column="0" CanUserResizeColumns="True" CanUserReorderColumns="False" > <data:DataGrid.Columns> <data:DataGridCheckBoxColumn Header="チェック" Binding="{Binding Path=Check}" /> <data:DataGridTextColumn Header="ID" Binding="{Binding Path=ID}" FontSize="16" IsReadOnly="True" CanUserReorder="False" CanUserResize="True" /> <data:DataGridTextColumn Header="名前" Binding="{Binding Path=Name}" FontSize="16" CanUserResize="False" IsReadOnly="True" /> <data:DataGridTextColumn Header="所属企業" Binding="{Binding Path=Work}" FontSize="16" IsReadOnly="True" /> <data:DataGridTemplateColumn Header="メール"> <data:DataGridTemplateColumn.CellTemplate>
<DataTemplate>
<HyperlinkButton VerticalAlignment="Center" Content="メール送信" NavigateUri="{Binding Mail}" TargetName="_blank"></HyperlinkButton>
</DataTemplate>
</data:DataGridTemplateColumn.CellTemplate> </data:DataGridTemplateColumn> <data:DataGridTextColumn Header="予定欄" Binding="{Binding Path=Ref}" IsReadOnly="True" FontSize="16" /> </data:DataGrid.Columns> </data:DataGrid>
先述したHyperlinkButtonの設置のため、DataGridTemplateColumnの下にDataGridTemplateColumn.CellTemplateおよびDataTemplateを配置します(太字部分)。DataTemplateの中で、実際に表示する内容を定義します。ここではメールアドレスへのハイパーリンクを表示するため、これらのタグにはさむようにツールボックスからHyperlinkButtonをドロップしました。なお、DataGridTemplateColumn以下には、DataGridを編集する際に表示するタグを指定するCellEditingTemplate
タグと、編集以外の時に表示するタグを指定するCellTemplate
タグを配置することができますが、今回はDataGridでの編集は行わないため、CellTemplate
タグを配置しています。
データバインドに関する記述ですが、今のところExpression Blendの[アイテムの追加]ではバインド内容の編集ができないようなので、太字で示しているようにVisual Studioで編集しました。既に親コントロール側でDataContextが設定されているため、プロパティ名を指定するだけでデータを取得できます。今回は下のような構文でバインドするプロパティを指定しました。
"{Binding Path=(バインドするプロパティ名)}"
DataGridTextColumnおよびDataGridCheckBoxColumnでは、Binding
プロパティに上記の構文で表示するプロパティを指定します。
DataGridTemplateColumn内に配置したHyperlinkButtonコントロールでは、リンク先URIを表すNavigateUri
プロパティに"{Binding Mail}"を指定して、メールアドレスへのリンクを生成しています。バインドするプロパティ名を記述する際には、「Path=」の部分を省略することもできます。ここでは実際にこの記法を用いました。
では実行しましょう。
冒頭の成功時の画面で示した通りに出力されているでしょうか。自動生成した表と大きな違いはありませんが、子要素を個別にバインドしているためそれぞれ自由にスタイルを変更することができます。メールアドレスはHyperlinkButtonで表示しているのでクリックするとメーラが起動し顧客リストの上のメールアドレス宛にメールが作成できます。
今回のサンプルではDataTemplateの中でHyperlinkButtonを使用しましたが、この方法であらゆるコントロールを配置できます。例えばImageコントロールを使って、オブジェクトからURIを取得して、DataGrid中に画像を表示することも可能です。このように、DataTemplateを利用すればDataGridコントロールの活用の幅は大きく広がります。
.NET Framework 3.5 SP1のWPFのデータバインディングでは、例えばDateTime型の変数をバインド元にする場合、次のような記述で書式指定することができます。
<TextBox Text="{Binding Path=date, StringFormat=yyyy年MM月dd日}"/>
しかし、残念ながら現在のところSilverlight 2はこの機能に対応していません。必要な場合はビハインドコードで
string printDate = date.ToString("yyyy年MM月dd日");
と記述するなど、値を整形した後にバインドする必要があります。