これからはディスプレイの外の世界へ
小笠原氏は、1998年ごろに創業2年目のさくらインターネットから離れ、自らも起業し、ベンチャーの投資家としても活動している。投資家としては特にIoTに注目しており、氏が代表取締役を務めるABBALabは、IoTスタートアップを支援するVCだ。
ABBALabは、ホログラムを利用したコミュニケーションサイネージの会社、血糖値が測れるトイレの会社、サッカー選手のモーションロガーを開発する会社、犬の心拍をセンシングして犬の感情を可視化する会社、スマートロックの会社、小電力無線通信(LoRa)のプロトコルを開発する会社、水田の水門自動管理システムの会社など、ユニークなスタートアップに投資を行っている。
小笠原氏とさくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏とは、「これからはディスプレイの中だけでなく外(新しいデバイス)にも出ていこう」と話し合っていたとのことで、約1年前にフェローとして同社に戻り、IoT関連のプロジェクトを担当することになったという。
IoTは「モノ」ではなく「モノゴト」で考える
14年ぶりにさくらインターネットに戻ったという小笠原氏だが、なんの権限もない状態でのスタートだった。その中、IoTで何をやろうかと考えたとき、「インダストリー4.0のような製造業の領域ではなく、生活に密着した製品を便利にする、ライフスタイルを変えるようなIoTをターゲットとしたい」と思ったという。
Internet of Things(IoT)は日本語では「モノのインターネット」と訳されているが、小笠原氏は「正しくは物事(モノゴト)のインターネット」ではないかと主張する。つまりインターネットにつながる「物」がデバイスであり、「事」がThingsの部分だという。そして、生活に密着したIoTサービスや製品を考えるメーカーやプロバイダーは、「事」の入力、ロジック、出力を考える必要があるとする。
すなわち、IoTでなにをセンシング(入力)して、どんな結果、フィードバック(出力)を得て、どんな価値を生み出す(ロジック)のか、という視点である。となると「インフラ屋である我々は、なにをすればいいのか。コトの部分とそのためのロジックは我々のユーザー企業が考えるべき。IoTの残りの部分、インターネットと物=デバイスの入出力部分だろう(小笠原氏)」と考えた。