Python完全サポートで広がるInterSystems IRISの可能性
IRISを活用する最大のメリットは、「データを発生源から取得して加工、保存、活用するまでを1つのプラットフォームで実現できる機能を有していること」と堀田氏は話す。つまり開発者は連携に頭を悩ます必要がないため、開発効率も大幅に上がるという。
その一方で、ベンダーロックインが懸念されるかもしれないが、IRISはオープンな技術との親和性や接続性を担保。パフォーマンスやスケーラビリティ、セキュリティなど実用に不可欠なところはプラットフォームに任せることで、オープンな技術を組み合わせるというクリエイティブな作業に注力して開発できるようになる。つまり開発者は、オープンな技術とIRISが提供するベーシックで一貫性が求められる部分を、うまく組み合わせるスキルが身につけられるようになる。「こうしたスキルは、これからの時代においてエンジニアにとって価値になるはず」と堀田氏は言う。
だが、そこには課題もあった。それはObjectScriptという言語を扱うプログラマ人口が少ないことである。この課題を解決するために2021年11月に発表されたのが、「Embedded Python」という機能である。Embedded Pythonとは、PythonのランタイムがIRISの言語処理モジュールに組み込まれることで、PythonのプログラムがIRISのプログラムと同等のレベルで実行されるという機能だ。つまりこれまでObjectScriptで記述していた処理を、Pythonで実装できるようになったというわけだ。
Pythonをサポートしたことで、「IRISの価値はさらに高まる」と堀田氏は胸を張る。その理由はPythonの広大なエコシステムが使えるようになるからだ。「Pythonはデータ分析や統計処理、Webサービスとの連携などに関するサンプルコードやライブラリが揃っています。それによって、IRISの活用の世界がこれまで以上に広がるはず」(堀田氏)
しかもPythonは今や多くの人が学びたい言語として挙げる人気のプログラミング言語。教育機関で学ぶことも多く、使えるエンジニアも多い。「IRISを活用するために、言語を新たに学ぶ必要がなくなります」と堀田氏は言う。IRISなら開発者が自身のプログラミングスキルでデータ操作ができるようになるため、AIやデータ分析の分野にキャリアチェンジできる可能性もあるというわけだ。
開発者だけではない。「データサイエンティストもDBを自分の手元で扱える技術を持つことは絶対有利になる」と堀田氏。これまでのように開発者とデータサイエンティストの分断がなくなり、「チームのサイロ化を防ぐことができるのでは」と堀田氏は期待を寄せる。
Embedded Pythonの反響は大きく、ユーザーからは「いい物を作ってくれた」と評判が高いという。活用シーンとしては大きく2つ。1つはPythonプログラマやデータサイエンティストがIRISの機能を活用するというケース。高速でスケーラブルなデータベースが手に入るだけではなく、インターオペラビリティ機能を用いたシステム統合が実現でき、堅牢なセキュリティも確保できる。「例えばデータサイエンティストがよく使うJupyter Notebookから、IRISのEmbedded Pythonのコードを呼び出すこともできます。IRISなら最新データを業務データから抽出するなどDBAチームとの連携がスムーズになり、より効率的なデータ分析が可能になります。また学習したモデルをPythonで実装できていれば、容易にデプロイすることもできる。分析モデルを業務システムに組み込む手間が大幅に削減されます」(堀田氏)
もう一つがIRISアプリケーションからPythonのエコシステムへアクセスするというケース。豊富なライブラリが使用できることに加え、開発要員の確保も容易になる。
IRISはエンタープライズでのデータ活用に最適な、次世代データプラットフォームと言える。関心を持った方は、無償で使える「Community Edition」が用意されているので、「まずは使ってみてほしい」と堀田氏。これまで同社はエンタープライズ向けパートナーモデルでビジネスを展開してきたが、最近は直接、開発者とつながれるよう開発者コミュニティにも注力している。質問や意見があれば、「気軽に開発者コミュニティに書き込んでほしい」と堀田氏は話す。
インターシステムズはミッションクリティカルなシステムを安定的・継続的に稼働させるためにサポートするだけではなく、テクノロジーの面白さや楽しさ、エンジニアにとっての醍醐味も大事にしているという。データ活用に課題を感じているのであれば、このタイミングでぜひ、IRISに触れてみてほしい。