マネージャーの“頑張りどころ”──組織体制とマインドセットにおける課題は?
続いて、「アジャイル推進をしていく過程での課題は?」という佐藤氏の質問に対し、岡澤氏は「紹介しきれないほどある」と答えた。その中でも「組織体制づくりについては、マネージャーの頑張りどころ。例えば、一般のWF案件では担当者が複数の案件を持っている場合が多いが、スクラムでは専任を推奨する。そのため1つの案件に集中できるように調整することが重要。その上で、人材不足については、教育や外部の活用を考えるべき」と語る。
そして、マインドセットの課題については、「アジャイルに特化したことではないが、当事者意識やビジネスマインド比率が重要。チームで取り組む中で、プロフェッショナルであるという意識は持ってほしい」と述べ、「ここについても、リーダーの役割が重要であり、組織やプロダクトがどこを目指すのか、ゴールを明確化することが大切」と語った。
組織のゴールを設定する際には、特に事業と開発を上手く融合させることが大事なポイントとなる。アジャイルやスクラムではゴールがビジネスに直結するために、技術とビジネスのつながりを意識しやすいのがメリットだ。岡澤氏は「チームメンバーには技術も磨いてほしいし、楽しく働いてほしい」と語り、今後について「楽しくエンジニアリングをすることで、それがビジネスに貢献していくという仕組みや風土づくりに取り組んでいきたい」と意欲を見せた。
アジャイルの推進役「オープンマインドなスクラムマスター」になるには?
アジャイルの推進において、リーダーの役割が鍵になってくるのは間違いない。それでは、リーダーにはどのような資質が求められるのだろうか。
岡澤氏は、かつてシリコンバレー系ベンチャーや元Googleメンバーと仕事をした経験からも、「多様性を受け入れスクラムマスターに似た感覚を常に持っていることが大切」と語る。つまり、オープンマインドで、メンバーやチームにどう貢献すべきかを考えながら、多角的な視点からビジネスマインドを醸成することが求められるわけだ。岡澤氏は特に、オープンマインドの重要性を実感しており、その実践により心理的安全性の担保やダイバーシティ実現など、さまざまな効果があったという。
さらに、「オープンマインドなふるまいはコーチングにも似ている」と語り、「フィードバックは上からの指揮命令ではなく、共通の認識を持ってもらうための手段。メッセージから必要なものだけを拾ってもらえればいい。そのためにも前提合わせが重要」と語った。例えば、アジャイルをやっていない隣の組織に問題があれば、そこにも介入して問題を解決するきっかけを作る。こうした越境を可能にするオープンマインドな姿勢ときっかけ作りを目指す姿勢が、アジャイル推進のリーダーには求められているというわけだ。
「ポジションが上がれば、見えてくる景色が変わる。チームだけを見ていた人が、その1つ2つ上の目線から組織を見られるようになると、自ずと行動が変わってくるだろう。その意味で、スクラムマスターという表現がふさわしいのではないか」と語った。