内製化チームの知見を全社へ──キーワードは「小さく始める」
──内製化チームの取り組みを、どのように社内で広めていますか?
大友:社内でシステム開発のコミュニティを立ち上げました。現在は約180人が参加しており、アジャイルに限らず、開発全般の知見を共有しています。オンライン・オフラインでイベントを開催し、テスト駆動開発などの実践的なワークショップも行うなど、私たちのノウハウを活かして、社内の他部門の開発支援や内製化推進に貢献しています。
森鳰:うれしいことに最近は、社内でアジャイル導入への関心が高まっており、私たちのチームで経験を積んだスクラムマスター資格保持者が、他チームのコーチとして支援を始めてくれています。このように開発技術と、アジャイル実践の両面で社内展開を進めています。
──内製化チームがあれば、社内にどのような価値を与えると思いますか?
森鳰:当社のような製造業の企業で、伝統的なやり方だけではなく新しい方法でも、成功できることを示すことが重要だと考えています。これは他のチームや会社全体に対して、「うちでもできる」という自信を与えます。アジャイルを始めたい人たちにとって、社内での成功例は安心感や挑戦する勇気を与える大きな価値があるのではないでしょうか。
大友:私も事業に貢献し、顧客に継続的に価値を届けられるチームを増やすことが、価値だと考えています。
森鳰:また、社内に一貫して内製化している領域があることは重要です。開発をベンダーに任せきりの企業も多いかもしれませんが、内製化チームがあれば、社内に開発全般の知見を持つ人材がいることになります。社内に知見があれば、ベンダーを使う場合でも任せきりではなくうまく協力することで、より柔軟な対応が可能になり、会社全体のIT力向上にも貢献できます。
大友:特にアジャイルにこだわる必要はありませんが、競争力のある領域のコア技術は内製化すべきだと思っています。
──今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
森鳰:現在は12名のチームですが、さらに大きくしたいと考えています。エンジニアが最大限実力を発揮して、会社の価値に貢献できる組織にしていきたいです。そのためには、一緒に開発することで、エンジニアにとって成長が期待できる環境を継続する必要があると考えています。
大友:会社全体を見ると、多くの部署で開発体制が整っていません。一人で全ての開発を担当するなど、チームすら形成されていない極端な属人化の状況もあります。これらの課題に対して、開発体制全体を変革したいです。大規模な内製化組織を作り、そこにノウハウや知見を集約することで、事業部と密接に連携しながら開発を進められる体制を構想しています。全ての開発者が安心して働ける環境を整えたいですね。
──最後に、アジャイル開発を内製化したい人たちへのアドバイスもお願いします。
森鳰:私自身の経験から言えることは、アジャイル開発は小さく始めるのが最も効果的だということです。一人でもできる範囲から始め、徐々に味方を増やしていく方法が良いでしょう。大々的に宣言するより、実践を通じて理解を得るほうが有効です。内製化については、スキルや経験は実際に開発をしないと効果的には身につかないので、安全な環境でとりあえずやってみるのが良いと思います。実際に私たちも多くの問題に直面しながらも、一つひとつ解決することで成長してきました。これが成功への近道だと思います。
大友:私からもアドバイスをさせていただくと、チェックポイントを用意して、適切な準備がされているかも確認するといいと思います。そうすれば、アジャイルの特性を活かしつつ、組織の要求する確認プロセスも満たすことができます。あとは楽しむことですね。この記事を通じて、アジャイルに取り組んでいる人たちと情報交換ができたらいいなと思っています。
──森鳰さん、大友さん、貴重なお話をありがとうございました。さらなるご活動の広がりを楽しみにしています!