Visual Studio 2010と.NET Framework 4への期待
これまでの話から、Visual Studioユーザーも2005以前のバージョンから、徐々に新しい開発環境に移行しつつあることが分かった。そして、次期バージョンであるVisual Studio 2010も既にベータ版が公開され、開発者たちの期待も高まっているようだ。
「Visual Studio 2008は、開発者の“大工道具”として完成度が高まっていると思います。IDE自体に歴史もあり、その点でもこれまでどおり信頼しています。私がVisual Studio 2010に最も期待するのは、大規模開発の際に必要になるツール『Visual Studio Team System 2008 Team Foundation Server(以下、Team Foundation Server)』が、リーズナブルな『Visual Studio 2010 Professional with MSDN』でも利用できる点。これまで予算面で導入できなかった開発者や企業も、チーム全体での品質向上が期待できるのではと考えています」(奥津氏)
こうした基本機能のさらなる充実など、期待が高まるVisual Studio 2010。担当者である近藤氏と新村氏は、その特徴を次のように語る。
「.NET Framework 4の提供により、さらにリッチな開発ができる点、“道具”自体の使い勝手が洗練されている点、そして製品の機能ではなく、MSDN Professional Subscriptionユーザー向けのTeam Foundation Serverの提供といった、『提供形態』にも特徴があります」(近藤氏)
「Silverlight、Office SharePoint Server、Windows Azureプラットフォームなど、幅広い種類をカバーしている点でも、既存の開発環境から新しいテクノロジーに向けて、さらに分野を広げることができるようになりました」(新村氏)
Visual Studio 2010においても、.NET Framework 1.0からの技術がベースになっており、テクノロジーががらりと変わるわけではない。しかし、Windows 7では、マルチタッチや新しくなったタスクバーなど、新機能が搭載された。Visual Studio 2010では、Windows Vista以前のOSではできなかった開発が可能になることも注目されている。
「これまでのアプリケーションは、CPUの速度が上がると性能が上がっていましたが、マルチコアのCPUでは、それに最適化した開発を行わないと、その恩恵を受けることはできません。.NET Framework 4の新機能の1つとして、マルチコアへの容易な対応が挙げられます。.NET Framework 2.0から3.5までの共通言語ランタイム『CLR』が、.NET Framework 4ではデバイスやハードウェアの進化に対応するためCLR 4.0として新しくまとめられました」(新村氏)
奥津氏にVSUGメンバーの視点から、Windows 7向けアプリケーションの開発状況について聞くと「パッケージソフトはかなり対応が始まっていますし、業務アプリはこれから開発が進むでしょう。また、開発者にとってはParallelクラスによるマルチコア対応が嬉しいです。マルチコア向けの開発は難しく、生半可な知識でやるとまともに動きませんから。幅広い開発者がマルチコアに対応しやすくなるのがひとつのバリューとなります」と語った。Windows 7のデフォルトの.NET Frameworkのバージョンは3.5。現状では、Windows 7向けの開発にはVisual Studio 2008が最適と言える。
「企業の中で、Internet Explorerなど1つのコンポーネントをアップデートするのは大変です。そうなると、Windows 7向けの開発はしばらくの間.NET Framework 3.5がターゲットとなるでしょうが、3.5に移行しつつ、.NET Framework 4を見据えた開発を行って欲しいですね」(鈴木氏)