カスタムディスパッチによるMailSenderクラスの呼び出し
実際の処理は出来ました。MailSenderクラスのcron関数は、"/mailSender/cron"というURLで呼び出されたら実行させ、"/mailSender/task"というURLであればtask関数を呼び出すようにしておく必要があります。
通常のLiftのURLのマッピングはテンプレートのファイル名によって処理されていましたが、テンプレートを使用しなくてもよい今回のような場合は、特定のURLに処理を直接結びつける方が便利です。このような場合は、カスタムディスパッチという機能を用いてURLと処理をマッピングさせることができます。
"Boot.scala"に、以下のような設定を行うことで、URLとMailSenderクラスで用意した関数をマッピングします。
LiftRules.dispatch.append { case Req("mailSender" :: "cron" :: Nil, _, _) => MailSender.cron _ case Req("mailSender" :: "task" :: Nil, _, _) => MailSender.task _ }
LiftRules.dispatch.appendに、URL毎にcaseとして呼び出す関数を指定します。"case Req("mailSender" :: "cron" :: Nil, _, _) => MailSender.cron _"は、「/mailSender/cronというURLではMailSender.cron関数を呼び出す」という意味になります。
呼び出す関数は、引数無しでBox[LiftResponse]を返す関数である必要があります。作成したcron関数やtask関数は、Full(OkResponse())を返していました。このOkResponse()は空の200 OKというレスポンスです。レスポンスの内容が空でよいので、今回はこのようなレスポンスを返していますが、画像ファイルなどのバイナリファイルを生成させる場合にも、このカスタムディスパッチの機能を応用して実現できます。
動作確認
では、ローカル環境で動作確認してみましょう。修正が完了したら、mvn packageコマンドでコンパイルし、dev_appserverコマンドで開発サーバを起動します。あらかじめ、翌日に開催されるイベントを追加しておきましょう。
ローカルでの動作確認では、注意点が2点あります。
1つ目は、cronによるスケジュール実行は、ローカルの開発サーバでは呼び出されないということです。ローカル環境では、cronで呼び出されるはずのURLをブラウザからアクセスすることでテストします。cronで呼び出すURLは、セキュリティ認証で管理者のみアクセスできるように指定してありますので、ブラウザからアクセスする際はあらかじめ管理者としてログインしてからアクセスする必要があります。
2つ目は、メールの送信は実際には行われない点です。Google App Engine上にアプリケーションをデプロイした場合は実際にメール送信されますが、ローカル環境では送信されません。ここでは、ログ出力でメールが送信されるはずかどうかを確認します。
ブラウザから"http://localhost:8080/mailSender/cron"にアクセスすると、以下のようにログ出録され、cron処理からTaskQueueに処理を追加し、メール送信される様子が確認できるはずです。
The server is running at http://localhost:8080/ INFO - Service request (GET) / took 1401 Milliseconds add queue 2, tes111t@example.com ← cron処理でTaskQueueに処理を追加したログ INFO - Service request (GET) /mailSender/cron took 359 Milliseconds INFO - Service request (GET) /favicon.ico took 25 Milliseconds Task done test2, tes111t@example.com イベント名:test2 日時 :2010/03/13 18:17 - 2010/03/13 18:17 場所 :aa 主催者 :tes111t@example.com← 送信されるメール本文のログ INFO - Service request (POST) /mailSender/task took 115 Milliseconds
まとめ
後編である本稿では、Googleが提供するアカウント認証、cronによるスケジュール実行、TaskQueueによるバックグラウンド処理を利用して、Google App EngineならではのアプリケーションをLiftで構築する方法を説明しました。
Goolge App Engineが提供するサービスは他にもMemcacheやXMPP、画像処理などさまざまなものがあります。こうしたサービスを利用しながら、スケールするアプリケーションをScalaとLiftを利用することでJavaに比べてすくない記述量で作成できるはずです。
今後も発展していくと予想されるGoogle App Engineなどのクラウドサービスと、Scalaの組み合わせは、今後も目が離せない組み合わせになりそうです。本稿がGoogle App EngineとScalaを組み合わせたサービスを開発するきっかけになれば幸いです。
参考資料
- The Scala Programing Language
- Lift
- 『Programming in Scala』 Martin Odersky・Lex Spoon・Bill Venners 著、Artima Inc、2008年11月
- 『The Definitive Guide to Lift: A Scala-based Web Framework』 Derek Chen-Becker・Tyler Weir・Marius Danciu 著、Apress、2009年5月
- Google App Engine デベロッパー ガイド
- TOPGATE Google関連技術サイト