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Google App Engine/JavaによるScala/Liftアプリケーション開発

Google App Engine/JavaでのScala/Liftアプリケーション開発(後編)

GoogleサービスのAPIを利用してアプリケーションを構築

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カスタムディスパッチによるMailSenderクラスの呼び出し

 実際の処理は出来ました。MailSenderクラスのcron関数は、"/mailSender/cron"というURLで呼び出されたら実行させ、"/mailSender/task"というURLであればtask関数を呼び出すようにしておく必要があります。

 通常のLiftのURLのマッピングはテンプレートのファイル名によって処理されていましたが、テンプレートを使用しなくてもよい今回のような場合は、特定のURLに処理を直接結びつける方が便利です。このような場合は、カスタムディスパッチという機能を用いてURLと処理をマッピングさせることができます。

 "Boot.scala"に、以下のような設定を行うことで、URLとMailSenderクラスで用意した関数をマッピングします。

[リスト15]Boot.scalaへの追加
LiftRules.dispatch.append {
  case Req("mailSender" :: "cron" :: Nil,  _,  _) => MailSender.cron _
  case Req("mailSender" :: "task" :: Nil,  _,  _) => MailSender.task _
}

  LiftRules.dispatch.appendに、URL毎にcaseとして呼び出す関数を指定します。"case Req("mailSender" :: "cron" :: Nil, _, _) => MailSender.cron _"は、「/mailSender/cronというURLではMailSender.cron関数を呼び出す」という意味になります。

 呼び出す関数は、引数無しでBox[LiftResponse]を返す関数である必要があります。作成したcron関数やtask関数は、Full(OkResponse())を返していました。このOkResponse()は空の200 OKというレスポンスです。レスポンスの内容が空でよいので、今回はこのようなレスポンスを返していますが、画像ファイルなどのバイナリファイルを生成させる場合にも、このカスタムディスパッチの機能を応用して実現できます。

動作確認

 では、ローカル環境で動作確認してみましょう。修正が完了したら、mvn packageコマンドでコンパイルし、dev_appserverコマンドで開発サーバを起動します。あらかじめ、翌日に開催されるイベントを追加しておきましょう。

 ローカルでの動作確認では、注意点が2点あります。

 1つ目は、cronによるスケジュール実行は、ローカルの開発サーバでは呼び出されないということです。ローカル環境では、cronで呼び出されるはずのURLをブラウザからアクセスすることでテストします。cronで呼び出すURLは、セキュリティ認証で管理者のみアクセスできるように指定してありますので、ブラウザからアクセスする際はあらかじめ管理者としてログインしてからアクセスする必要があります。

 2つ目は、メールの送信は実際には行われない点です。Google App Engine上にアプリケーションをデプロイした場合は実際にメール送信されますが、ローカル環境では送信されません。ここでは、ログ出力でメールが送信されるはずかどうかを確認します。

 ブラウザから"http://localhost:8080/mailSender/cron"にアクセスすると、以下のようにログ出録され、cron処理からTaskQueueに処理を追加し、メール送信される様子が確認できるはずです。

[リスト16]出力されるログ
The server is running at http://localhost:8080/
INFO - Service request (GET) / took 1401 Milliseconds
add queue 2, tes111t@example.com  ← cron処理でTaskQueueに処理を追加したログ
INFO - Service request (GET) /mailSender/cron took 359 Milliseconds
INFO - Service request (GET) /favicon.ico took 25 Milliseconds
Task done test2, tes111t@example.com 

イベント名:test2
日時      :2010/03/13 18:17 - 2010/03/13 18:17
場所      :aa
主催者    :tes111t@example.com← 送信されるメール本文のログ
INFO - Service request (POST) /mailSender/task took 115 Milliseconds

まとめ

 後編である本稿では、Googleが提供するアカウント認証、cronによるスケジュール実行、TaskQueueによるバックグラウンド処理を利用して、Google App EngineならではのアプリケーションをLiftで構築する方法を説明しました。

 Goolge App Engineが提供するサービスは他にもMemcacheやXMPP、画像処理などさまざまなものがあります。こうしたサービスを利用しながら、スケールするアプリケーションをScalaとLiftを利用することでJavaに比べてすくない記述量で作成できるはずです。

 今後も発展していくと予想されるGoogle App Engineなどのクラウドサービスと、Scalaの組み合わせは、今後も目が離せない組み合わせになりそうです。本稿がGoogle App EngineとScalaを組み合わせたサービスを開発するきっかけになれば幸いです。

参考資料

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Google App Engine/JavaによるScala/Liftアプリケーション開発連載記事一覧
この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 尾崎 智仁(オザキ トモヒト)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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