もっとScalaっぽいプログラム
次は、もうすこしScalaの特徴を活かしたプログラムを見てましょう。REPLで、リスト4の内容を入力してみます。
このリスト4のプログラムは、人物を表すPersonを継承したMaleクラスとFemaleクラスがあり、MaleとFemaleのオブジェクトを持つリストがあります。リストから、20歳以上の人物を抽出して出力しています。
// 抽象クラスPerson。名前と年齢を持つ abstract class Person{ val name:String // 名前のフィールド val age:Int // 年齢のフィールド } // 男性のクラス case class Male( name:String, age:Int) extends Person // 女性のクラス case class Female( name:String, age:Int) extends Person // 人物のリスト val list = List( Male("Miles", 32), Female("Ella",18 ), Female("Sarah",25), Male("Wes",16) ) // 人物のリストから、引数の年齢以上のものを抽出する関数 def filterAge( n:Int, xs:List[Person] ) = xs.filter{ _.age >= n } // 20歳以上の人物を男性と女性で分けて出力 filterAge( 20, list ).foreach{ p => p match { case Male( n, _ ) => println( "%sさんは成人男性です" format n ) case Female( n, _ ) => println( "%sさんは成人女性です" format n ) }}
短いプログラムですが、caseクラスや高階関数によるコレクション操作、パターンマッチなど、Scalaのエッセンスがあちこちにちりばめられています。
REPLで、リスト1のプログラムを入力してみましょう。次のような出力が得られるはずです。
Milesさんは成人男性です Sarahさんは成人女性です
これより、このプログラムをもとにScalaのエッセンスを紹介したいと思います。
クラスの定義 - 抽象クラス・継承・ケースクラス
では、サンプルプログラムで定義しているクラスを見てみましょう。抽象クラスPersonと、男性のクラスMaleと女性のクラスFemaleを定義しています。
// 抽象クラスPerson。名前と年齢を持つ abstract class Person{ *1 val name:String // 名前のフィールド val age:Int // 年齢のフィールド } // 男性のクラス case class Male( name:String, age:Int) extends Person *2 // 女性のクラス case class Female( name:String, age:Int) extends Person *3
まずは、*1の抽象クラスPersonを見てみましょう。クラスの宣言は、Javaと同じくclassキーワードを利用します。abstractキーワードをつけることで、抽象クラスとして宣言したことになります。
Personクラスは、名前と年齢のフィールドを持っています。抽象クラスの中で、valで宣言したフィールドは、サブクラスで適切に初期化される必要があります。
次に、Personクラスを継承したMaleクラスとFemaleクラスを見てみましょう。こちらは、具象クラスです。
extendsキーワードで、継承先の親クラスを指定できます。「extends Person」と指定されているので、Personクラスを継承していることになります。
classキーワードの前にcaseキーワードが付与されています。これは、Male/Femaleクラスはケースクラスであるという宣言です。
ケースクラスとは、パターンマッチで比較可能な、イミュータブル(変更不可)なクラスです。ケースクラスは通常のクラスに加えて、次のような特徴があります。
- newキーワードなしでMale("Miles", 32)のようにオブジェクトを生成できる
- コンストラクタ引数が自動的に読み取り専用で公開される
- equals,hashCode,toStringが適切に実装される
- パターンマッチ(後述)で使えるようになる
Personクラスのサブクラスでは、nameフィールドとageフィールドをサブクラスで初期化する必要がありました。ケースクラスにすることで、コンストラクタ引数で渡されたnameとageが自動的にフィールドとして初期化されて公開されるため、あらためて定義する必要がなくなっています。
scala> val miles = Male("Miles",32) miles: Male = Male(Miles,32) scala> miles.age res1: Int = 32 scala> miles.age = 45 <console>:8: error: reassignment to val miles.age = 45
リスト7は、REPL上でMaleクラスのインスタンスを生成して、フィールドにアクセスした結果です。「new」キーワードなしでインスタンスが生成され、フィールドは読み取り専用になっている様子が分かると思います。