クラウド環境やエコシステムの進化により、
開発者の重要性が増していく
続いて、クラウドプラットフォームサービスのジェネラル・マネージャ スティーブ・ロビンソン(Steve Robinson)氏が登壇し、開発者の現在の役割について「ルネッサンスが起こっている」と切り出した。「スタートアップ企業が新しいアイデアと最小限の人員で起業したり、世界中でプログラミング学習のコースが現れたりすることが増えている。開発者が新しいキングメーカーであるという説もある」(ロビンソン氏)。
自身も長らくプログラミングを行ってきたという同氏は、イノベーションはどれも開発者によって行われることを確信していると述べ、クラウドによって必要な機能をオンデマンドですぐに使い始めたり、無限ともいえるインフラ、マシンパワー、データベースを自在にスケールしたりといった、5年前には想像もできなかったような環境が整いつつあること。プログラミングする上での頭痛の種がどんどん解消されていることを、その理由として述べた。
ただし、課題もある。「4月末に発表した『コンポーザブルビジネス』はまったく新しいやり方であるし、パブリッククラウド向けの開発を行っているのはおそらく5%以下のプログラマである。また、巨大な企業資産を活用する必要もある」。これらを解決すべく「BlueMix」を開発した(今年2月に発表され、現時点でベータ版)とロビンソン氏は説明した。BlueMixはさまざまな言語向けのテンプレートからアプリケーションを素早く作成してクラウド上に配置し、運用管理まで行えるPaaSサービス。OSSのCloud Foundaryがベースとなっており、モバイルバックエンドサービスなどが拡充されている。
また、ロビンソン氏はBlueMixの設計方針として、「オープンスタンダードの活用」「モバイルファースト」「エンタープライズグレード」の3点を挙げた。
IBMはエンタープライズ向けのミドルウェア製品開発に長い歴史があり、BlueMixのパーツに必要とされるノウハウをすべての分野で持っているため、急速にポートフォリオを拡大できる点で優位性がある。また、サードパーティのコンポーネントを載せたり、自分で作ったサービスをアップしたりできるエコシステムも用意している。
同日、追加で「AppScan(モバイル、Webアプリを直接スキャンできる)」「Embedded Reporting(アプリに分析機能を追加する)」「Workflow(クラウドサービスのオーケストレーション機能)」「Continuous Delivery Pipeline(ビルド・テスト・デプロイの自動化サポート)」の4つのサービスが発表された。
IBMが自ら成長のスピードを加速するBlueMixは、
早くも6月末に一般公開を予定
BlueMixを活用した実装面のデモンストレーションとして、サンフランシスコのベイエリア高速鉄道(BART)の車両管理システム(オンプレミス)をモバイル対応し、ハイブリッドクラウド化する例が紹介された。ブラウザ上でコードを修正し、修正結果がプッシュ通知でリアルタイムにスマートフォン側に表示されるといった様子が実演され、旧来の方法でやったら6か月かかるところを15日間に短縮できたと、開発を担当したシンクロニィ・システムズCEO スラヴィック・ゾーリン(Slavik Zorin)氏はBlueMixの手応えを述べている。
ロビンソン氏は、BlueMixの開発を支援する施設「BlueMix Garage」や、BlueMixで活用できる資源や情報を集めた「IBM Cloud Marketplace」が提供されていることも紹介した(参考:『IBM Impact 2014基調講演レポート①』)。
また、IBM社内でも積極的に活用することでBlueMixの成熟度が急速に高まってきており、アメリカでは6月末に一般公開(GA)をする予定であることも今回明らかにした。
再度、クロークナー氏がステージに登場し、「Innovate@SPEEDの属性としてコラボレーション・リユース・アセンブリが重要で、これにクラウドが加わりスピードを出すエンジンとなること」「BlueMixはSoftLayer上で動いており、2000のAPIが公開されているSoftLayerでコーディングを行うことでリユースや拡張が用意」といったことに触れ、BlueMixのサービスがスピードの実現者になっており、IBM社内でもリーンスタートアップモードで実践していることを強調した。
基調講演の後半では、BlueMixを活用した継続的なデリバリーにまつわる5つの特徴的なユーザー事例が紹介された。こちらは別途お伝えしたい。