ベテランエンジニアが漠然とした不安を抱く2種類のパターンと原因
先述のように、キャリアに対する不安はほとんどのエンジニアが感じていることだ。それは、経験を積んだベテランとも言うべきエンジニアにも当てはまる。今野氏は、経験を積んだエンジニアが漠然とした不安を抱くときの典型的なパターン2種類を示した。
1つ目は、仕事に飽きて退屈だと感じているエンジニアのパターンだ。この場合、自分が解くべき課題を小さく捉えてしまっており、課題が小さいから簡単に達成できてしまい退屈に感じる。その結果モチベーションが下がり、漠然とした不安を抱くこととなる。WillとMustとCanが作る3つの輪で表現すると、経験を積んで自分ができることは増えた(Canの輪は大きくなった)。しかし、自分がやらなければならない課題を小さく捉えている(Mustが小さい)ため、3つの輪のバランスが崩れ、重なりが小さくなっている。ベテランになると解くべき課題自体を自ら発見する必要があり、この状況に拍車をかける。
もう1つのパターンは、反対に自分がやらなければならない課題を大きく見積もりすぎているパターンだ。経験を積んでできることは増えたが、それでも追いつかないくらいに課題を大きく考えてしまっている。1つ目の例とは反対に、Canの輪に対してMustの輪が大きすぎるわけだ。仕事を抱え込みすぎて潰れてしまいそうな状態と言えるだろう。
どちらにも共通するのは、やらなければならない仕事(Must)を正しく認識できていないという点だ。決してやりたいことが少ない(Willが小さい)からモチベーションを落としているわけではない。そして今野氏は、上記2つのパターンを解決するには、エンジニア本人が課題を適切に認識するスキルを身に付ける必要があると説く。
さらに今野氏は、上記2つのパターンに対する解決法を明かしてくれた。1つ目の仕事に飽きて退屈と感じているエンジニアの場合は、退屈と感じながら同時に自分自身の成長が鈍化しているのではないかと漠然とした不安を抱いているだろう。もしそういう状況に陥っているようであれば、自身が働く環境で「イケてないな」と思う点を3つ書き出してみると良い。技術的な内容でも職場に関する内容でも構わないが、たいてい書き出した3つは、自分が動けば必ず解決できるか解決に貢献できる。「課題は認知した時点で半分は解けているので、自分ができることとやるべきことを考える」のが狙いだ。
ただし、書き出してはみたものの、今の自分の力ではどうしても解決できない課題が出てくる場合もある。その場合にはまず、「課題をかみ砕いて、自分にも解ける問題にする」という方法が考えられる。かみ砕いてみたが、それでもなおどうすることもできない問題が出てきてしまったのなら、その問題が解けるようにスキルアップをしていけばよい。どの方法も、WillとMustとCanが作る3つの輪のうち、Must(やらなければいけないこと)を拡大してあげる手法と言えるだろう。