チーム外との「横のつながり」を生み出す5つの施策を紹介
続いて、会社の黎明期に入社した横田氏が登場。患者と薬剤師をつなぐプロダクトの開発を担うドメインで、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」の開発チームに所属しており、0人から300人へと社員が急増する中で、開発エンジニアをしつつ、既存社員と新しく入った社員との橋渡し役を多く担ってきたという。
そんな横田氏にとって、「チームメンバー以外とのつながり=横のつながり」は、メリットが大きいという。信頼関係ができれば困った時に助けてもらい、問題解決がスムーズになる。また、つながった先からさまざまな情報が集まり、知識やキャリアにプラスになる。そして、チーム内で視点が固まりがちなところ客観的な意見がもらえ、「セレンディピティ」につながることも多い。これらは社会ネットワーク理論でも、よく話題としてあげられるものだ。
この「横のつながり」をつくる上で、近年影響が大きいのがリモートワークだ。「地理的な制限を受けない」「会議室予約などミーティング場所を作るハードルが下がる」などのメリットがありつつも、「ランチ・立ち話などでチーム外のメンバーと顔を合わせる機会がなくなる」「偶然に知り合いの知り合いが知り合いになることが少なくなる」といったデメリットも生じている。つまり、何もしなければ、横のつながりが生まれず、チームがどんどん閉塞化してしまうというわけだ。
そこで、カケハシではあえて「横のつながり」をつくるため、5つのタッチポイントで施策を実施しているという。それぞれについて詳細が紹介された。
1.チャット
①新入社員向け
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自己紹介チャネル
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担当メンターが新入社員の紹介をする。自己紹介ドキュメントや分報チャネル(後述)へのリンクも貼られている。
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駆け込みチャネル
- どこに聞けばいいかわからない質問を聞くと、誰かが回答・エスカレーションする。
いずれも横のつながり作りに役立ち、当事者でなくても「誰が何に詳しいか」を知ることができるというメリットがある。
②既存社員向け
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分報
- 自分専用のつぶやきチャンネル。困っていることを呟けば、誰かがサポートしてくれる。
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趣味チャンネル
- 地域・趣味・技術的トピックなどのチャネルでチームを跨いで交流できる。
特に趣味チャンネルは部署や役職関係なく参加しており、横のつながりづくりに大きく貢献している。
2.全社ミーティング
①新入社員紹介
月1回開催。新入社員自身が事前に用意した自己紹介ページを使って、ファシリテーターと対話しながら自己紹介する。全社員が参加し、タイムラインでは、趣味チャネルへの勧誘などがあり、横のつながりを作るきっかけになっている。
②定常時
月1回開催。「Most Valuable Furumai」として、カケハシの推奨する価値基準(Value)に相応しい振る舞いを事例とともに紹介し表彰。チャット上の「称賛ワークフロー」を活用し、気軽に誰かを称賛できるようになっており、そこからピックアップされる。バリューの浸透のために始められたが、社員同士の話題のきっかけとなっている。
3.社内勉強会
学習することが推奨されており、業務時間を使って勉強会を開催できる。
①全社のLT会
月1回1時間枠で全社対象で実施。EMメンバーがリードして運営し、発表内容は有志で集める。テーマは、技術トレンド・ナレッジシェアなど。社内のエンジニアメンバーの興味や得意分野がわかる。
②草の根の勉強会
草の根で勉強会や輪読会が実施されている。DDDやLeSS、React、データ基盤、データサイエンス、医療情報ガイドラインなどテーマは多岐にわたり、チームを跨いで交流が自然とできるようになっている。
横田氏も勉強会を主催した経験があり、その経験から「横のつながり」を促進するための工夫として次の5つが紹介された。
- 誰でも気軽に参加できるように、勉強会用のカレンダーを作成する
- 継続的に繋がれるように、定例会化する
- 勉強会の時間の中で交流できるように、相互に話す時間のゆとりを作る
- 勉強会の時間以外でも交流できるように、勉強会ごとにチャットのチャネルを作る
- 会社から書籍代の補助があり、企画・参加のハードルを下げられている
4.オフサイトミーティング
オフラインで集まるミーティング。エンジニアが全員で集まる企画では、ワールドカフェのようなワークショップが開催され、直接お礼を伝えたり、知り合いに紹介してもらって人の輪が広がった。他にも、CTOの肝いり企画であるクラフトビールのサブスク「オトモニ」と絡めた飲み比べイベントなども開催された。なお交通費支給や、チームのメンバーとの二次会の食事代補助があり、つながりを作るきっかけにもなっている。
5.メタバース(Gather)
全社的に導入検証中。評価はチームによって異なっていた。集中している、ミーティングをしているなど、他者の状況がわかり、チーム間の立ち話や雑談が生まれるなどのメリットがある反面、PC環境の問題で一部メンバーが使えなかったり、独自の運用ルールの整備が必要だったり、運用が難しい部分があった。
以上、さまざまな施策を通じて、横田氏は「リモートワークは横のつながりが生まれにくいが、さまざまなタッチポイントを設けることで促進できる。会社の文化も重要」と語りセッションを終えた。