「とにかく手を動かして、成果を出してください」と言われたら
このようにマインドを高める手法は多々あるものの、チャレンジングな目標を目指している最中では、こうした取り組みに割く時間がなかったり、結果が出なかったりということもある。
小田中氏によれば、こうした状況では「スキルアップよりもハードワークを選択し、残業で乗り切ろうとする『気合と根性のハードワーク開発宣言』が採択されやすい」といい、その危険性に警鐘を鳴らす。「メンバーがハードワークに傾倒している場合は、マネジメント側でスケジュールを見直して予定を削減したり、ハンズオン勉強会を強制的に実施したりといった軌道修正を行い、学習習慣を形成する必要がある」というのだ。
また、プロジェクトがこのような状況に陥ると、ステークホルダーから「勉強よりも成果を出せ」と圧力をかけられることもある。しかし、現在の知識や技術に頼り、継続的な学習を怠ることは「木こりのジレンマ」に直結する。
小田中氏は、こうしたムチが飛ぶ原因を「ステークホルダー側の高い目標と進捗のミスマッチが原因」としつつ、自分たちが取り組んでいるラーニングセッションの重要性や期待される効果を丁寧に説明することで、相互に期待値をすり合わせることの大切さを説いた。
時には設定したKRの分析やインクリメントから得られた知見に基づいてKRを更新・修正するなど、成長の過程で新たな気づきを得ることもある。小田中氏いわく、OKRにおいてはこの気づきに沿った見直しも不可欠であるといい、1か月ごとにKRを見直すことを推奨する。こうした見直しを通して成長と学びを重ね続けることで、目標を達成する日が訪れるのだ。
目標達成の判断にも注意が必要だ。定量的な目標であるKRはともかく、定性的な目標は安易に「達成できている」としてしまいがちだからだ。小田中氏は「三者的にステークホルダーを交えて判断していくのが大事」と、客観的な立場から判断してもらうことの重要性を強調する。
これらを乗り越えて目標を達成したら、次は新たな目標の設定だ。この段階においては、まずは目標達成をチーム全員で祝ったうえで、個人やチームがどれだけ努力したか、満足いく取り組みができたかという主観的な振り返りを行うことが欠かせない。「達成の満足感を全員でシェアしたうえで、さらなる高みを目指し、新たな旅に出ていく。この繰り返しが目標設定だ」と小田中氏はまとめた。
講演の終わりに、「目標設定はあくまでも始まりに過ぎない。目標を達成するために、アジャイルの考え方を取り入れながら、継続的に目標と向き合い続けることが大切」だと立ち返る小田中氏。右手にマインドを、左手にスキルを携えながら前進・成長することが目標達成につながるため、まずは手の届く範囲に目標を設定し、その達成に向けて日々努力を重ねていくべきだと総括した。
「そういう組織が増えたら世界はもっと良くなる。みんなで良い世界をつくっていこうじゃありませんか」。小田中氏は今日も、高い目標に向かって歩みを進めている。