ユーザが触れるUIが良くなければ評価されない
3人目のスピーカーとして登壇したのは、株式会社トレタ COOの吉田健吾氏。吉田氏は、「UIデザイナー不要説」に対し、自身のブログで「UIデザインの価値」という記事を書いており、このセッションもタイトルを「UIデザインの価値」として行った。
吉田氏によれば、優れたビジネスモデルも高い技術力も、ユーザが触れるUIが良くなければ評価されないのだという。さらに、UIデザインは競争力の源泉であり、重要であるにもかかわらず、実際には価格、機能的なメリットなどがUIデザインより優先されることがある。UIデザインも数ある要素の1つであり、重要ではあるが万能ではないからだ。
注目したいのは、「BtoBアプリ・サービスでは、操作の迷い、無駄な動き、ミスを誘発するUIデザインはすべてコストになる。それゆえ、シンプルで使いやすいUIデザインの価値は高い」という同氏の指摘。BtoB分野では、意思決定において高機能・多機能・低価格であることが優先されやすく、使い勝手は二の次とされ、「1年も使えば慣れる」という考えがまかり通ってしまう。
この現状に対し、吉田氏は「UIがシンプルで使いやすいことの重要性を伝え、BtoB分野での『使いにくさの常識』を突破し、UIデザインを競争力としてその価値を証明していきたい」と述べ、BtoB分野におけるデザイナーの存在意義を、会場のデザイナーに向けてアピールした。
スキルのない人がUI設計を任されるのは10年前から変わらず
最後のスピーカーは、「経験に基づく『UIデザイナー』の必要性」をセッションタイトルに掲げた、BASE株式会社 取締役CTOの藤川真一(えふしん)氏。藤川氏は、10年前に書いた自身のブログエントリ「Webの設計は誰がやるの?」を振り返りつつ、UIデザイナーの必要性を示した。
当時、UIデザイナーという職種はなく、UI設計に責任を持つ人がいないために、アーキテクチャ不在のUI設計を製造工程で開発部門がコスト持ち出しで修正するというケースが多々あった。また、UI設計の重要性が認知されていない、必要なスキルを持たない人材が「とりあえず」アサインされてしまうといった問題は、10年前と変わらず今でも存在するのだという。
藤川氏はこのブログエントリの中で、Webサイトの設計にはユーザビリティを考えた画面設計能力、ビジュアルデザインと同義の情報配置能力、ドキュメント作成能力などが必要であり、その役割を担うのは「エンジニアとビジュアルデザイナーの中間に位置する人材」と述べている。しかし、これらの能力をすべて備えたスーパーマンのような人材はいない。
藤川氏はこの点について、「UIデザイナーに、すべてのスキルが求められるわけではない。足りない部分は、エンジニアやディレクターなど周囲のメンバーと積極的に関わって解決すべき」と説明。さらに、UIデザイナーは、職業としてまだフィックスされていない。教育プロセスを経て、専門知識を得て成長できる人材を育て、職業を定義していかなければならない、と課題も併せて提示した。
なお、藤川氏も、「UIデザイナー不要説」に呼応するブログ記事を書いている(「UIデザイナーはいらないのか?その存在意義について改めて考える」)。こちらもご覧いただきたい。