1on1が持つ4つの目的とその重要性
「1on1の重要性とは何か?」冒頭、ZOE氏は会場にそう問いかけた。1on1の実施に悩むリーダーやマネージャーが多い中、1on1がどのように広範な課題をカバーし、組織全体の成長を促進するか、その意義と位置づけを明確にするために解説を始めた。
そもそも1on1は、目標設定や評価、進捗確認の場ではなく、雑談、課題、悩み、キャリアについて話す場だとZOE氏は話す。なおかつ1on1は「受ける側のための時間」であるため、実施する側が一方的に話す状況は避けるべきで、「受ける側が話しやすい環境を整えながら対話を促進し、相互に理解を深めていくことが大切だ」という。
このような1on1を実現するには、「傾聴」も欠かせない。「1on1は、行う側のほうが豊富な知識や経験を持つことが多い。そのため、ついアドバイスやフィードバックをしたくなるが、これは良くない。まずは相手の話をじっくり聞き、そのうえで反応を返していく」のが大前提だ。
続いてZOE氏は、1on1には4つの種類があると述べた。1つ目は「信頼関係の構築」を目的とした1on1である。これは初期段階でよく行われる1on1であり、相手のプライベートな話題や趣味、業務に対する正直な気持ちなどを通じて、相互の信頼を深める場である。
2つ目は「業務報告や相談」に焦点を当てた1on1だ。これは業務に関連する課題や取り組み方、最近の活動について話し合う場であり、「場合によっては、実務では得られない別の観点に触れるきっかけになる」とZOE氏は語る。また、実施者が直接の評価ラインの上司である場合には、業務上の障壁の把握や除去、業務負荷の把握・調整などもスコープに入ってくる。
3つ目の「目標設定・評価」に関する1on1は、成長意欲に基づく目標設定や課題の共有、評価基準のすり合わせを行う場だ。これと似ているのが4つ目の「成長支援」を目的とした1on1で、ティーチングやコーチング、フィードバックを通じて、スキルアップを支援していく。振り返りや行動支援、壁打ちやキャリア相談なども、ここに含まれる。
このように、多岐に渡る役割を担う1on1。ZOE氏は聴衆へ目配せをしながら、「どこから手をつければ良いのかと迷う人も多いだろう」と理解を示す。
そのうえでZOE氏は、「信頼関係の構築」を第一歩目に位置づける。信頼関係があるからこそ、業務の報告や相談がスムーズになり、課題の発見や共有が進み、解決と振り返りが可能になるというわけだ。
さらにZOE氏は、「まずは自分とタイプが近い人や、業務上の関わりが多い人から1on1を始めるのがおすすめ」と話す。なおかつ、1on1実施の経験が乏しい場合には、前任者を交えた“モブ1on1”のような形式で、まずは会話の盛り上げに徹するのも手だ。
なお、1on1の基礎については、2月に開催されたDevelopers Summit 2024の講演でも詳しく解説されている。