Google App Engineの制約
Google App EngineがGoogleのインフラを無料で使用できるといっても、そのリソースを無制限に使用できるわけではありません。共同でGoogle環境を使用するので、それぞれのユーザーに対し、制約が設定されています。Google App Engine上で動作するアプリケーションを開発する場合は、あらかじめその制約を踏まえておく必要があります。
リソースの使用制約
Google App Engineでは、Quotaと呼ばれる1ユーザーあたりに割り当てられたCPUやネットワーク帯域などのリソース量と、Limitとよばれる制限(主に1回の処理で使用できるデータ量上限や、デプロイリソース数の上限)によって、ユーザーが使用できるリソース量に制約が定められています。
Billingの有効/無効切り替えによるQuota上限の調整
Quotaは、ダッシュボードで設定できるBillingという設定を有効にすることで、リソース使用上限量をアップすることができます。Quotaは、Billable QuotaとFixed Quotaに分類されています。Billable Quotaは、リソースに支払う上限料金をユーザーが設定することによってリソース使用量の上限値を調整できるQuotaです。Fixed Quotaは、Google App Engineで上限値が固定で決められていて、ユーザーが調整できないQuotaです。なおLimitの上限値は、Billingの設定にかかわらず変更することができません。
その他の制約
Google App Engineでは、QuotaやLimit以外にも、プログラムに対して、以下の制約を定めています。
- ローカルファイルの書き込みはできない
- プロセス、スレッドは使用できない
- Socketは使用できない
Google App Engineに適したアプリケーションとは
Google App Engineの概要について説明してきましたが、Google App Engineはどのようなアプリケーションに用いれば、その効果を発揮するでしょうか。それは、大量のデータを扱い、システムをスケールさせる必要があるアプリケーションです。そのようなシステムとは以下のものが考えられます。
- CGM(Consumer Generate Media)やSNS
- アクセス解析システム
- 広告ターゲティングシステム
- 集合知を扱うシステム
これらのような大量のデータを扱うシステムで、Google App Engineの価値は発揮されると著者は考えています。
構築するサンプルアプリケーション(TwitterRecommender)
本稿では、大規模なデータを扱うアプリケーションとして、ミニブログサービスのTwitterとGoogle App Engineを連携させるアプリケーションを構築します。Twitterが提供しているAPIにアクセスし、ユーザーのフォロー、被フォローのデータを取得し、アクセスしたユーザーが、まだフォローしていないオススメのtwitterユーザーを画面表示するアプリケーションを構築します。図12に、サンプルアプリケーションの概要を示しました。
まとめ
本稿では、一般的なWebシステムをスケールさせる考え方とそれにかかるコスト、そしてGoogle App Engineの概要と、Google App Engineのバックエンドで使用されているGoogleの技術について主に説明しました。Google App Engineは、従来当たり前にかかっていたインフラ構築コストを大幅に削減することができる可能性を秘めたスケールの大きなインフラサービスであると言えるでしょう。
次回は、このGoogle App Engine上で動作するTwitter連携アプリケーションを実際に開発することで、Google App Engineの使用方法、アプリケーションの開発方法などについて説明していきたいと思います。
参考資料
- 『Googleを支える技術』 西田圭介 著、技術評論社、2008年3月
- 『Google App Engine for Java [実践]クラウドシステム構築』 (株)グルージェント 著、技術評論社、2009年9月
- ITpro 「オバマ大統領も満足したGoogle App Engineのスケーラビリティ」 吉川和巳 著、2009年7月