とにかく新技術を使いたい顧客、営業からの丸投げ……あなたならどうする?
<ROUND 1:VS 企業 クライアント> 「うちもメタバースをやるぞ!」
「昨今、さまざまなクライアント企業から『うちもメタバースをやるぞ!』という声が聞こえてくる」という入江氏。メタバースに限らず、Web3やブロックチェーンなど、「新しい技術を取り入れて、とにかく新しいことがやりたい」というわけだ。
しかし、なぜやりたいのか、その目的や事業計画が明確でないことも少なくない。「『それをやりたいだけなら、べつにメタバースじゃなくてもいいのでは?』と思うこともある」と話す清水氏に対し、「おまけにメタバースに対して抱くイメージは人によってさまざまで、コストや実装方針を詰めていくところで営業やクリエイティブと戦うことになる」と田中氏も補足する。
もし仮想通貨が絡むようなすごく大きなオンラインゲームをつくりたければ、相当なコストが発生する。そうなるとクライアントが目指す目的に対して、費用対効果が見合わないものになりがちだ。そんなとき清水氏は、メタバースではない他の要素技術や手法を対案として提示したり、他社事例を参考にしながら目標設定を行ったりしていくという。
<ROUND2:VS 社内営業> 「そのへんは阿吽の呼吸で」
広告会社の営業といえば、丸投げするイメージもあるかもしれないが、実際、曖昧な会話で会議が終わることも多いという。「そこで食い下がって『いやいや、ちょっと待って! 今の課題は、こういうことだよね?』と目に見える形に落とし込んでいくことが、その後の明暗を分ける」と語る田中氏。ハイコンテクストなふんわりした内容を排除して、図版やプロトタイプをつくりながら、共通認識をつくっていくことが大切なのだ。
「なぜなら我々テクニカルディレクターは、営業だけでなくプログラマーと相対する必要があるから。現場の方は『AかBかはっきり決めてよ』というスタンスであることが多いので、曖昧な認識を排除するのはとても大事。抽象度が高い状態でプロジェクトが進んでいかないよう、安全弁として機能する必要がある」と清水氏も同調する。